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残虐悪魔の偽正義  作者: 残虐ナルシ
『悪魔狩り』の悪魔と『最弱』の少女
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第4話 白銀の弾道

 朝の静かな河川敷、そこに空から二人降り立つ者がいた。一人は背に一対の黒い翼を生やしており、黒髪で紫の瞳を持つ、顔が少し厳しめの少年。もう一人はその少年に抱えられた、白銀のロングヘアーで青い瞳を持つ、幼い顔つきの少女だ。地に少年が降りると同時に、背の黒い翼は煙のように消滅し、少年の瞳は緑色に変化した。そして少女を地面に降ろし、辺りを見渡して言った。

「ここならば、俺がある程度加減すれば周りに被害が及ぶこともないな」

「…。」

少女は少年の言葉に応答するわけでもなく、顔を真っ赤にしてうつむいていた。

「サリー、聞いてるか?また顔が赤いみたいだし、大丈夫か?」

「…!?ひゃいっ!?」

ここでようやく、少女…長谷川サリーは我に返り、少年が自分の顔を覗き込んでいることに気がついた。

「なななな何でもありません!!!!そそそれより、わ、私、守君と戦闘訓練なんて無理ですよ」

「大丈夫だ。本気出すつもりはないし、重傷にはなるかもしれないけど、すぐ傷を完治させる方法あるから安心しろ」

と、少年…天雕守はサリーに返答する。

「あ、死なないんですね、安心しました…って、なるわけないじゃないですか!!結局重傷はするんですよね!?」

「だから、傷は完治できるから安心しろって言ってるだろ」

「そういう問題じゃないです!!そんな力勝ち目が一切無いし、相当苦痛を感じるじゃないですか!!もっと弱められないんですか?」

「無理だな。力を抑えるっていうのもすごく疲れるんだ。それくらいが限界だ」

「…なら、せめて常人じゃありえない数のFoGの数…制限してほしいです…」

「あれ、やっぱバレた?」

「昨日のアレを見てバレないと思いますか…?」

半ば諦めムードのサリーがそういうと守は苦笑し、話を続ける。

「まあ確かに10のFoGを持つのは、お前の言った通り常人じゃありえないよな…」


 人は普通、1~3つのFoGしか持てず、また、発現することは無い。FoGは保持、使用をするのに、肉体に大きな負担がかかる。そして、4つ以上のFoGを持つと、肉体がその負荷に耐え切れなくなり、良くて体の一部を失い、悪ければ死に至ってしまう。そのため、人間のには元から1~3つのFoGしか発現しないようになっていて、また、人工的にも4つ目を植えつけることを禁止している。

 しかし、世界の人間の中で、例外が2人だけいたのだ。そのうち1人がこの少年、天雕守だ。彼は限界である3つを遥かに超す10のFoGを持ち、自由自在に強力な力を操っているのだ。それも、体にそこまで負荷をかけずに。彼のことは多くの研究者が研究していが、一切解明されることはなかった。しかし、彼だけは知っている。何故その力が自らに秘められているかを…。彼は…おっと、何故彼がその力を秘めているか、これ以上は私からは言えない。いずれ彼が話してくれるだろうし、そうなると、私が描く未来は決定しているのだから…。

…話を戻そう。守は故に強者として恐れられ、実力も第3位として認められているのだ。


そんな10のFoGをもつ彼を、サリーは少し恐れているかのような目で見つめる。

「そ、そんなに持ってるんですか…?」

「まあ、な…」

一瞬悲しそうな表情をするが、すぐ、にこりと笑みを浮かべ…

「それよりも、使うのは3つでいいか?3つ持ちだったらお前も戦闘したことあるだろ?」

「いいですけど…せめて何を使うのかだけでもいいので教えてください…。」

「…」

守は一瞬ためらうような表情をするが、何事もないように喋り出す。

「俺が使うのは『魂の魔術師(ソウルメイジ)』、『嫉妬』、そして『傲慢』だ」

「やっぱり名前だけじゃ分からないです」

「そっちも手の内明かしてないんだから、名前だけで十分だ」

「…それもそうですね。それと、やっぱり勝利条件はどちらかが降参(サレンダー)するまでですか?」

「当たり前だ。さて…もう始めていいか?」

もう守の方は準備ができているようだ。そしてサリーの方は覚悟を決めたのか、これまでの言動からは想像できなかったような真剣な表情になり、幾つかのポーチを腰につけると、彼を見て口を開く。

「私も大丈夫です。そっちから先手を打っていいですよ」

「へー、そんなことを言っちゃっていいの?まあ、遠慮なくさせてもらうけど!!」

そう言うと、彼は目を瞑り静かに呟く。

「魂よ、暴れさせてやるから力を貸せ。」

すると、彼の体から3つの光り輝く球体が現れ、さらにそれぞれが3つに分裂し、最終的に9つの球体が守の周りを円形に並ぶ。

「こいつらは『魂の魔術師』で集めた、人間の魂達だ。お前は昨日見てたんだから分かるよな?」

「…」

笑いながら何てこともないように話す守とは違い、サリーは真剣な表情で彼を無言で見ていた。

「それで、魂っていうのはエネルギーの塊だ。だから…。」

その途端、彼の周りを円状に並んでいた魂が、急にすごいスピードで回転し始める。

「こう使うこともできるんだよ!!『魂の魔弾(ソウル・バレット)』!!」

そして、9つのうち、3つの魂…エネルギー弾がサリーめがけて飛び出し直撃…

「あれ?なんの対策もしなかったのか。じゃあ、あの勝率はまぐれか…。……!?」

…してはいなかった。エネルギー弾が地面に当たって起きた砂埃が消えると、そこには誰も居なかったのだ。そして、魂が当たった所のその少し離れた場所に彼女、サリーは居た。

「ア、アイツ…砂埃で見えなかったけど、全て避けたのか!?」

 守の表情に一瞬、余裕そうな笑みが消えるが、それに追い打ちをかけるかのごとく、彼の耳を銃弾がかすった。

「…っ!?い、いつの間に…」

サリーを見た守は、いつの間にかその右手に握られたハンドガンに驚きを露わにしていた。が、彼はすぐ我に返り、残り6つ出現させている魂の内、3つを使って『魂の魔弾』として放つが、彼女は今度はその魂の内2つを拳銃で撃ち、残り1つをサッと横に跳び躱す。

 その行為で守は自分の予測が当たった、いや、むしろ想像以上であることを理解した。彼が予測していた以上にサリーは、回避能力に長けており、かつ、FoGではない戦闘法、銃の腕が常人離れしていた。また、普段は見せない冷静な判断力があることも知った。

 ハンデを与えすぎたな…、そう彼は後悔をしていた。だが、彼女はそんな守の心情はお構いなしに守に銃弾を撃ってくる。彼はそれを斜め前に前転して躱すが、その躱した先で足の先に何かが触れるのを感じた。足元を見ると、そこには2つの手榴弾があった。そう、サリーが撃っている最中に投げたものだったが、久しぶりに少し焦りを覚えていた守はそれに気付かなかったのだ。

 守の顔から余裕の笑みが消え、そして、爆発するまでの数秒の間に彼は考えを巡らせた。『嫉妬』の熱操作での凍結を考えたが、それは直で触れないとその対象に対して発動しない。つまり、後数秒で爆発するこれに触れられる可能性はとても低く、それを行おうとするのははっきりいって無謀だった。そう、逃げ場もない絶望的な状況だと思われた。

 だが、守は再び笑みを浮かべ、地面に向かって、2発の『魂の魔弾』を地面に向かって撃ったのだ。そして、反動で彼が後ろに押し出されたのと同時に、手榴弾も爆発し、その爆風でさらに守は後方へ吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 守はすぐ起き上がった。一部火傷を負い、頭からは血が流れていたが、彼は何事もないように立ち上がった。彼は助かった。しかし、すぐに、ハンデを与えすぎたな…、と再び思うことになった。そう彼は甘く見ていたのだ。『最弱』と呼ばれている少女のことを。異能力者としては『最弱』ではあるが、それ以外の戦闘法だけをみれば、『強者』となりうる少女のことを。目の前にいる彼女のことを。

 彼…守は、目の前の少女…サリーに喉元に銃口を突きつけられていたのだ…。

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