日常から 1
私の日常はほとんどがアマン村で過ごすこと
アマン村は小さな村だが、突然ミロナさんの孫になった私にもやさしい扱いだった。
そんな村だから、なんだか過ごしやすいし、ここの人たちと一緒に居られるのがたのしい
「おーい、ハナ。これをいつものところに届けてくれ」
ミロナさんが私に大きな籠を渡してきた。私は二つ返事で受け取り、外へでる。
黒い屋根を目指し、私は大通りを進む。
「おや、ハナちゃんじゃないかい。今日もミロナ爺さんのお使いかい?」
「パレナさん!こんにちは、いまから鍛冶屋さんに行くところです。」
パン屋の前を通りかかると、店の女将・パレナさんが声を掛けてきた。パン屋というのは私が個人的に言うだけで、この世界でいうとキフ屋。
キフ屋の女将・パレナさんは、なんていうか、好奇心旺盛で、優しい人だ。
この人は、物語でいうと想像通りの恰幅のよい人だ。
「ああ、鍛冶屋んとこかい?だいぶ良くなったんかいあそこの倅は?」
「はい、もう少しでリハビ…じゃない、歩行訓練が出来るようになりますよ」
「はは、そうかい。よかったよかった。あそこの倅は、真面目だからね。そりゃ喜ぶよ」
「そうですね。キルアさんはとっても真面目ですから、医者の見立てより自分の気持ちで動くからミロナさんは呆れてますけどね」
「そうでなきゃぁ、キルアじゃねえよ」
「そうだね、ちょうどよかったニケル。これ、キルアくんに持ってお行き」
「おう、いくぞハナ」
「あいつ、喜ぶだろうな。だいぶ怪我のせいで落ち込んでいたから」
「キルアさん、仕事熱心ですから」
「まぁな、でもそのおかげで俺は母さんから、やれ『仕事しろ、見習え』なんて言ってくる」
ニケルさんは、キフ屋の二番目の息子。
一番目の息子さんは、今は王都に奉公に行っている。
だから、パレナさんは、ニケルさんをだいぶ頼りにしている。
でも彼は、基本的にキフ屋の仕事が好きではないから、だいぶ女将さんにやられている。
黒い屋根の鍛冶屋。キルアさんの家に着くと、ノックもなしにニケルさんは入って行った。
勝手知ったる他人の家。
「おーい、キルア!きてやったぞ、ついでにキフ持ってきたぞ」
「失礼します」
「おー、こっち来てくれ」
部屋の奥に行くと、彼の姿が見えた。
怪我をした片足を引きずりながら、私たちを迎えてきてくれた。
「キルアさん、まだ立たないでください。」
「無理無理」
「すまないけど、早くどうにかしてくれないか。ミロナさんに頼んでくれよ」
「そ、それはすみませんが無理です。」
キルアさんは本当に仕事熱心で、いつもこう言ってくる。
でも私は苦笑いするしかない。
「ハナを困らせんなよ」
「そうじゃないよ、大変なんだって!これ見てくれよ」
そう言いながら食卓に置いてあった紙指し示す。
そう、それが私の日常を崩す始まりの一つだった。