旅立ち 2
ニケルを見送った後、僕は青い屋根の家を目指す。
そして、その家に着くと僕はなにも言わずに静かに扉を開けて家へ入った。
入ってすぐ、僕は二人の厳しい視線を浴びることとなった。
視線の主であるミロナさんは言葉を掛けた。
「ニケルは闇道へ」
「はい、見送りました。確かに彼は闇道へ」
「ごくろうだった」
ミロナさんの横にいた村長は、少しだけ表情を崩すと僕に席をすすめた。
「パレナさんはどうされていますか」
僕は、彼らと同じ席に着くのをためらい、そのまま立って話始めた。
「パレナはハナのそばにいる。目が覚めたら真っ先に謝りたいと」
「それは・・・・」
「ああ、それはよしたほうがいいといったんだが、彼女がな」
「いくら被害者と加害者の家族とはいえ、あのようなことを受けたハナのそば男である我々がそばにいるのもはばかられる」
「・・・・そうですね」
「私の息子の妻であるリベニアに来てもらえるように声をかけてある。急ではあるが、ハナが回復次第リベニアに引き取ってもらい、アマン村ではなく離れた地で療養か、名目は奉公への準備として彼女には迎えに来てもらう」
僕は悔しさで目を閉じた
あの時少しでも早くあの場に居れば、少しはハナの傷が和らいだのではないか
ニケルは闇道へと旅立つことはなかったのではないか
村長の選択は極めてやさしいものだ
村を治める者の裁量によって犯罪者は裁かれる
基本的に犯罪者は贖罪への道
「闇道」を進むことが多い
それは極めて生存率の低い、明らかに死を狙ったものだ。それでも死ななかった者は、神に許された者として奉仕をすることになる。奉仕の内容は極めて劣悪な環境での奉仕や命の危険性が高い軍への奉仕、危険地への派遣が多い。
常に命をさらされながら許されるかの日まで奉仕を続ける。
村の者たちには、その者の犯した罪が告知され、その家族は村の晒しものとなり、村はずれで住むことを命じられる。
ハナのように暴行を受けた婦女子は、嫁入り前の乙女だった場合、なにもせずに髪は短くなり、皆にその者が乙女ではなくなったとわかる。その者は晒され恥ずかしい思いをしながら人知れず、遠い教会へと連れていかれる。
嫁入り後であり、正式な誓いのもと乙女を失っていた場合は教会で身が清められるまで身を置くこととなるが、村というせまいコミュニティの中では晒しものになることは変わらず、これもまた遠くの教会や村に連れて行かれることとなる。
貴族の世界では、金さえ払えばどうにかなるとも聞いたことがあるがそれは貴族世界で通用すること。所詮こんな小さな村では通用するものではない。
ハナも同じ用な処置を施されると思っていた。
しかし、村長は違った。彼は、記憶がないニケルといまだ目を覚まさないハナの処置を寛容でありながら厳しく処置した。
表向き、僕に触発されたニケルはパレナさんに内緒で軍へ志願するために村を出ていく
ハナは、年頃であることから貴族に奉公へ出されることとし、二人を村から追い出すこととした。
だれも傷つかない
当事者以外傷つかないように。