日常から 4
ニケルが外に出て、キルアを担いでキフ屋に戻ってきて、パレナさんが説教初めて約2時間ほど経ったころ
「わかったかい?」
「・・・・っ、はい」
いつもへらへらした態度でいるキルアがもう委縮して、床に座っている状態だ。
私は、そろそろいいころ合いかと思い何度かお茶を出してみようと試みたが
『いまここで入ったら、お前も説教されるぞ!』
とニケルに止められ、傍観していた。
ああ、今日の晩御飯は何にしようか
このままだと、庭の野菜と米でリゾットにしてみようか。
でも、このままつづくのなら準備が難しいし、ミートパイでも買って帰ろうかな
でも、スープは作らないと。葉物野菜は庭にまだあったけ。豆スープは・・・、う~ん
傍観もやがて暇になり、今日の夕飯の献立を考えていると私の肩が軽く叩かれた。
「おい、おわったぞ」
「え?」
ニケルが指差す方向を見ると、キルアは泣いている。そしてパレナさんも。
「え~と、どうしたの?」
頭をかきながらニケルは苦笑して答えた。
キフ屋の女主人、パレナは情の深い人と評判だ。教会では、おもに中心となり寄付やお祈りをしたりと、ボランティア精神旺盛な人といえる。
彼女は先の流行り病で、自分の娘と主人を亡くしている。そのためかもしれないが、流行り病に瀕死状態から回復した息子のニケルを大事にし、村の娘たちにも自分の亡くした娘と重ねるように大切にしてる。
ハナのことは、さらに両親を亡くした不幸な娘として認識しているためか、何かと目をかけている。
パレナの娘とはだいぶ年が離れている。しかし、世間知らずなところがあるハナは、幼く亡くしたパレナの娘と大分年が変わらないような感覚で接している様子がある。
それは、同じく妹を亡くしたニケルも変わらく、なにかと世話を焼く。
それは変わらない日常の一コマ・・・
「いつもありがとうございます。でもよかったんですよ、まだ昼の星は出てるし。」
「いいんだよ、それに送ってやらなきゃ母さんがうるさいし、こいつも送ってやらなきゃな」
「へへへ、いつもありがとね、でも担ぐの辞めてくれない。」
「うるせい!お前なんて引きずるのが一番だが、ハナが言うから担いでやってるんだよ」
苦笑しながら、ニケルに担がれているキルアを見る。
先ほどまでパレナさんに怒られて、しょぼくれていた様子はもう見られない。
それどころか先ほども、ニケルとふざけあっていた。
その様子は兄弟のような、一年前に日常で見ていた同級生の男子の絡み見たいだ。
いつの世も異世界でも、男同士は絡むと大人でも男の子になるのか。
二人の絡み合いを笑いながら、ミロナさんが待つ診療所へ。
今日の晩御飯はパレナさんお手製のシチューとパウンドケーキだ。
一応、異世界には異世界のものの名前がありますが、主人公視点になるとそれを前の世界の言葉、似ているものに言い換えています。
この世界のシチューはミルス、パウンドケーキはキッフです。