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窓越しのいたずら

薄曇りの空の下、今日も澪はいつもの小道に立っていた。

「ねぇねぇ、神谷くん、見てるでしょ?」

伊織は窓際の椅子に座ったまま、視線だけを外に置く。返事はしない。

澪は小さく舌を出し、足元の落ち葉をちょんと蹴った。

「……ほんと、無視するんだ。つまんないなぁ」

それでも毎日、澪は同じ時間にやってくる。

葉っぱを積んでみたり、石を並べてみたり、時には窓に手をつき身を乗り出してみたり。

どれも伊織の気を引こうとする、精一杯の小さな挑戦だった。

「神谷くん、ねぇねぇ、ちょっと見てよ!」

伊織はゆっくりと視線を窓の外に移す。

澪はにやりと笑い、指で小さな葉っぱをつまんで投げる。

「ほら、キャッチできるかな?」

無言のまま、伊織はほんの少し視線を追うだけ。

澪は口を尖らせ、ちょっと拗ねたように腕を組む。

「無視すんなってば……つまんないなぁ」

次の日も、その次の日も同じ光景は続く。

澪は声のトーンや仕草を微妙に変えながら、伊織の反応を探る。

石をつつくときの力の加減や、葉っぱを落とす位置、ちょっとした笑い声——

どれも伊織が目を向けるかどうかの小さな実験だった。

ある日、澪は少し大胆に、窓に手をつき身を乗り出した。

「ねぇ、神谷くん、ちょっとこっち見てよ!」

伊織は肩をすくめて視線をそらすだけ。返事はなし。

澪はくすくすと笑う。


その声に、伊織は視線を一瞬だけ止める。

澪は髪の毛を指でくるくるして、さらに笑う。

「お前の髪、カルセドニーみたいな色してんだな」

澪は首をかしげ、きょとんとした表情を浮かべる。

「かるせ……どにー? え、なにそれ?」

「ふーん……面白いね」

伊織は視線だけを窓の外に置く。

澪は少しふくれっ面を作り、手を振った。

「無視するんだ……つまんないなぁ」

それでも毎日、澪は現れる。

その存在は、いつの間にか伊織の視界に自然と入るようになり、

無言のやり取りの中で、二人だけの静かな時間が少しずつ積み重なっていった。

薄曇りの空、揺れる木々の葉、窓越しに触れる風——

小さな日常が、灰色の世界にひそかな彩りを加えていく。

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