第七話 夜の城下町
前田利家は追放処分を受けていた時期に、無断で桶狭間の合戦に参加しました。この戦いで三つの首級を挙げましたが、信長には許されず、続く、森部の戦いでも利家は無断参戦して、そこで怪力の豪傑・足立六兵衛を討ち取る功績を挙げ、ようやく信長から帰参を許されました。
「博徒などは、命までは取らんでも良かろう」
そう言って利家は稽古用の木刀を、
三本、持ってきて、
「賭場の場所は誰か知っているのか?」
と、問うと、新介が答えた。
「俺は二、三度、行ったことがあるよ」
こうして俺と前田利家、毛利新介の三人は、
夜の城下町へと出た。
そして歩きながら、利家が新介に聞く。
「だいたい博徒って、そこに何人くらいいるんだ」
「多い日は、十人くらいはいるかな。楽勝だろう」
こうして町外れの賭場に着くと、
バァーン!
利家が戸口を蹴り飛ばして破壊した。
「なんだ、テメェら!」
刀を抜いた若衆が一人、飛び出してきたが、
バシン。
新介が木刀の一撃で気絶させる。
賭場の中は騒然となり、
「な、何だ!」
「出入りか!」
客が20人ほど、慌て逃げ惑った。
「おいおい、若い、お侍さんよォ」
親分格の中年男が貫禄たっぷりに凄みながら、
「俺たちは、お偉いさんの許可を得ているんだよ」
そう言ってから、
「こんな事して、ただで済むと思うなよ!」
と、怒声をあげたが、俺は右足で、
バシンッ!
問答無用に蹴り上げた。
「ぐあぁっ、いったい何なんだよ、あんたらは?」
「お前たちが袋叩きにした遊行女婦の仕返しだよ」
そう言いながら俺は木刀で、ぶっ叩き、
グシャリ
と、親分の右肩を叩き潰す。
「痛でぇ、何しやがる!」
「もう片方も、潰すか?」
「野郎ども、殺っちまえ」
俺たちは十数人の博徒と乱闘になったが、
当然、あっという間に叩きのめした。
そして後日、利家の話によると、
「あの博徒の親分はな、復讐のために」
俺たちのことを調べ回ったらしいが、
「我々の正体を知って、この城下町から」
逃げ出だしたらしい。だが、
あの遊行女婦も岐阜城の城下町から姿を消した。
前田利家は後年、加藤清正からも武略に通じていると称されています。利家は合戦について「必ず敵の領内に踏み込んで戦い、僅かでも自分の領国へ踏み込まれてはならない。信長公が、そうであった」と、語り、その戦術は織田信長の下で得たものでした。




