第六話 遊行女婦
今川義元の首を討ち取った毛利新介の生年は不詳。出身地は尾張であると考えられていますが、その辺りも不明な点が多い人物です。桶狭間の合戦の後は、信長の親衛隊の黒母衣衆に加えられました。後年は官的な役割も果たしたといわれています。
例の遊行女婦の事だが、ある夜、
城下町の路地裏で彼女が全裸で倒れているのを、
俺は偶然、発見した。
「おい大丈夫か、どうしたんだ?」
「あぁ、お侍さんかぁ、アタシね」
娘には全身に殴られたような跡があり、
その話によると、博徒の金を盗んだところを、
見つかって袋叩きにされたという。
「着物も剥ぎ取られて、自業自得だけどね」
俺は娘を放ってはおけず、
かといって全裸の女性を愛都のいる家には、
連れて帰りにくい。
「そうだ、利家の家に行こう」
この近くには前田利家の屋敷があり、そこへ、
俺は裸の娘を担ぎ込んだ。
「これは、どうなされたのですか」
「マツ殿、大変申し訳ないが頼む」
俺は事情を説明して、
利家の妻のマツに、娘の手当を願いでる。
そこへ、屋敷の主の利家が、
「マツ、今帰ったぞ」
少々、酒を飲んで帰ってきた。
傍らには、飲み友達の毛利新介を連れている。
「申し訳ない利家、お邪魔しているよ」
と、俺は事の経緯を利家に話した。
その話を聞いた新介が冷やかすように言う。
「お前が遊行女婦に熱を上げるとはな」
その新介発言に、
利家は、俺を庇うように言葉を返した。
「おい新介、誰でも、女遊びくらいするだろうよ」
「あら、旦那様も、女遊びくらいするのかしら?」
マツは娘の手当をしながらも利家を睨んでいる。
「いや、俺はしない、マツだけだよ」
そして娘は、マツの用意した布団で眠る。
「少し熱が出ているようね」
と、マツは娘の額に濡れた手ぬぐいを乗せた。
それを眺めながら利家は、こう言う。
「博徒の金を盗むとは、この娘も性悪女だがな」
「若い娘を、ここまで殴って着物まで奪うとは」
新介も同調するように言葉を続けて、さらに、
「その博徒、懲らしめてやるのだろう?」
俺に向かって尋ねた。
城下町の始まりは戦国時代です。城下町には敵の侵入を防ぐ袋小路など複雑な道の工夫が施され、防御拠点としての役割がありました。やがて城下町には商業拠点の側面も見られるようになり、特に織田信長は楽市楽座を設けるなど、経済の発展に大きな成果をあげました。




