第五話 楽市楽座
「楽市楽座」は簡単に言えば、商工業者の組合の既得権益を撤廃して経済を活性化さる政策です。織田信長の政策として有名ですが、その創始者は六角定頼という近江の守護代でした。また今川義元の息子・氏真も「富士大宮楽市令」を発布して、経済を活性化させ、領民から慕われていたといいます。
岐阜城の城町は楽市楽座で繁栄していた。
これは信長様の経済政策である。
町には多くの商人が集まり賑わいを見せていた。
その城町で、夕暮れ時、
「お侍さん、スケベなことしよ♡」
と、声をかけられ、驚いて振り向くと、
真っ赤な着物を着た色白の娘が、ニコリと、
笑顔を見せる。
「なんだ遊行女婦か」
俺が、そう言葉を漏らすと、
「なんだって言い方はないんじゃない」
「ああ、これは済まなかった。ではな」
立ち去ろうした俺の袖を娘は掴んで、
「アタシと遊べるなんて幸運なことだよ」
「なにが幸運だよ。お前さんは大袈裟だ」
「大袈裟じゃない。アタシは人気者でね」
確かに、そう言われると、この娘は美人で、
何とも言えない妖艶な色気が漂っている。
「家で妻が待っているからな。俺は帰るよ」
「女遊びの一つもしないと出世できないよ」
「出世など俺はしなくてもいい。それじゃ」
その日は、それで帰った。
今、俺と愛都は岐阜城の城下町に住んでいる。
だが、その日以来、
俺は、あの娘な事が気になっていた。
「なんか最近ソワソワしてない?」
と、妻の愛都に指摘されて、
俺は内心ドキリとしながら誤魔化す。
「ソワソワなんてしてないよ。気のせいだろう」
しかし数日後、俺は遊郭に足を運んでしまった。
「やっぱり来てくれたんだね。嬉しいよ」
「そんなに歓ぶなよ。お前も仕事だろう」
「そんな言い方は止めてよね。冷めるわ」
こうして遊郭でヤルことをシた後、
娘は甘い声で言う。
「ねえ、アタシを、お妾さんにしてよ」
「待てよ、俺に、そんな甲斐性はない」
「その身なりは足軽じゃないでしょう」
この娘は魅力的で俺も妾にしたいと思うが、
そんなことは愛都が許さないだろう。
「悪いが俺は恐妻家なんだ」
そう言い残して俺は立ち去った。
遊行女婦という呼称の女性の仕事は、定住せずに各地を巡り、宴席で歌や踊りを披露することでしたが、戦国時代には遊郭が築かれ娼婦と同じになっていきました。




