第三話 姉川の戦い 前編
お市の方は政略結婚で浅井長政に嫁いだものの夫婦仲は良かったと伝えられています。2男3女を授かり、織田家と浅井家が対立するようになってからも娘を出産して夫婦関係は円満でした。
1570年7月30日。姉川の戦いが始まった。
織田・徳川連合軍、4万騎。
浅井・朝倉連合軍、3万騎。
両軍が激突して、激しい戦闘が繰り広げられる。
「我は前田利家なり!」
利家は朱槍で敵陣に突撃した。
追放処分を受けていた彼も帰参を許され、今は、
前田家の家督も継いで家臣団も従えている。
「皆の者、かかれ!」
「おおぉぉぉーっ!」
利家の一団は果敢に敵を押したが、そこへ、
「我こそは浅井助七郎なり!」
黒塗りの槍を携えた浅井軍の武将が、
眼前に立ちはだかり、名乗りをあげた。
「いざ尋常に勝負!」
と、利家と助七郎は一騎討ちに挑み、
ガチ、ガコ、ガツ。
三度、槍で打ち合った後、両者は組み付いて、
「浅井の豪傑は、その程度か」
利家が抑え込んで、首を掻っ切った。
全身に返り血を浴びた利家が、
「浅井助七郎の首、討ち取っり!」
切断した首級を掲げる。
それでも浅井の軍勢は怯むことなく、
果敢に戦って、本陣に迫ってくる勢いだ。
「行け、織田信長の首を討ち取れ!」
「おっ来るか、浅井も中々やるのう」
と、信長様は余裕綽々だが、俺は、
「新介、行くぞ」
毛利新介(今川義元を討ち取った武士)と、
騎馬を並べて敵勢に突っ込んだ。
「とりゃあ!」
敵兵を槍で蹴散らしながら、
「護れ、本陣を護るんだ!」
俺と新介は、味方の兵を鼓舞する。
「おおおおおーっ!」
信長様の旗本は奮戦し、何とか敵を押し返した。
やがて形勢が織田・徳川連合軍に傾き出した頃、
「我は真柄直隆なり!」
朝倉軍から黒鹿毛の騎馬が飛び出す。
ズバッ、ズバン、バスン、ズバッ。
大太刀で徳川軍の兵を薙ぎ倒しながら、
巨漢の直隆は家康の本陣へ向け突進した。
「うわっ、化け物か」
直隆は単騎で家康の陣を突き進んだ。
姉川七本槍とは、姉川の戦いで手柄を立て織田信長から賞された、伊達与兵衛、林平六、渡辺金太夫、伏木久内、中山是非之助、吉原又兵衛、門奈左近衛門の七人です。後に、彼らは徳川軍の武将となりました。




