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第二話 金ヶ崎の退き口

 1573年。木下藤吉郎は、名を羽柴秀吉に改めました。羽柴の由来については、織田家の重臣である柴田家と丹羽家にあやかって一字ずつ頂戴したといわれています。急速に出世した秀吉は、古参の家臣に気を使っていたのしょう。

「急ぎ、京都へ撤退するぞ」


 浅井長政の裏切りで、

 信長様は僅かな供回りだけを率い、

 京都へ向け馬で奔った。その供回りには俺と、


「愛都、急ぐぞ、ついて来れるか?」

「大丈夫よ、私、乗馬は得意だから」


 男装の愛都もいる。

 そして、この金ヶ崎城の戦場に残ったのは、


「木下藤吉郎が殿しんがりを務めます」


 藤吉郎は敵の追撃を食い止める、

 危険な任務に志願したのだ。

 この藤吉郎の奮戦があり、

 信長様は無事に京都に逃げ帰ることができた。


「命拾いができましたな」


 と、俺は安堵の声を漏らす。

 京都まで信長様を守り抜いたのだ。


「その侍女が、お市の書状を届けてくれたからな」


 と、信長様は言う。愛都も命懸けで、

 北近江からか金ヶ崎城までの使者を務めた。


「安心したら、お腹が空いちゃった」

「よしよし、飯にしよう。京料理だ」


 信長様は、皆に京料理をふるまい、


「お前たち、夫婦になれ」


 唐突に言ったが、実は俺は、

 愛都が、お市の方に従って北近江に旅立つ時に、

 結婚の約束をしていた。

 だが、今はいくさの最中だ。


「えっ、信長様、こんな時に馬廻衆が結婚ですか」

「よいよい、めでたい事ではないか。ハハハハッ」


 信長様は愉快そうに笑い、

 その縁談はトントン拍子に進んで、

 俺と愛都は京都で祝言をあげた。


「京都で結婚できるだなんて夢にも思わなったわ」

「そうだな、だが今は浅井・朝倉との戦の最中だ」


 その俺の言葉聞き愛都は不安気な表情を見せる。


「お市様は、今後、どうなるのかしら?」

「さあ、馬廻衆の俺には判らない事だな」


 浅井長政は信長様を裏切り、朝倉氏に味方した。

 そして信長様を討とうとしたのだ。


「これは大戦になるな」


 その後、信長様は岐阜城に戻り、軍勢を整えて、

 浅井長政の討伐のための兵を挙げた。

 金ヶ崎の戦いの撤退で織田信長は朽木元綱の協力を得て京都に逃げ延びました。元綱は当初、信長を殺すつもりでしたが、松永久秀が元綱を説得して翻意させたため信長は京都に帰還できたのだと「浅倉記」には記されています。

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