【第89話:仮面の徒、再び】
牢獄を抜け、外に出ると――
目の前には無数の魔物たちが待ち構えていた。
「う……うわ、な、なんだこりゃ……」ロイは肩を押さえながら後ずさる。
クランも息を飲む。王と王女は目を丸くして、恐怖に凍りついていた。
しかも魔物の師団長、三人までもが姿を現す。
「こ、こんな……三人も……!」ロイの声は震えていた。
だが、その瞬間、空気がひんやりと変わる。
「来たな……」ゼイヴの目が鋭く光った。
そこに仮面の徒たちが姿を現す。
まず仮面の騎士シグラが師団長の一人に斬りかかる。
「ぐあっ!」師団長の首が、あっという間に転がった。
続いて、仮面の徒グラトスが拳を振り下ろす。
師団長は文字通り粉々に吹き飛んだ。
さらに仮面の徒マーヴォが瓦礫を操り、残る師団長に無数の瓦礫を突進させる。
「な……なに……!」ロイとクランの声も虚しく、師団長は瞬く間に全滅した。
「……ゼイヴ様……迎えに参りました。」
クランは思わず息を呑む。
ロイも肩の痛みを忘れ、ただただ仰天するばかり。
その時、マーヴォがロイに目をやり、ヘラヘラと笑った。
「いやぁ……久しいね、元気だった?」
しかし、次の瞬間――魔物の親玉が姿を現した。
「ここまでか……!」ロイは思わず身をすくめる。
だがゼイヴは静かに、しかし凛とした声で言った。
「時は……止まる」
その言葉と同時に、魔物の親玉の口から血が噴き出し、無残に崩れ落ちた。
周りの魔物たちは恐怖に駆られ、一斉に逃げ去っていく。
「……終わった……のか?」ロイは肩を押さえつつ、信じられない光景を見つめた。
クランも王も王女も、ただ静かにその場に立ち尽くす。
「フフ……皆、無事で何よりだ」ゼイヴは微笑み、静かに剣を収めた。
その背中を見て、ロイは呟いた。
「……俺、何やってんだ、ただ走ってただけじゃん……」
クランは笑いながらも、ゼイヴたちの強さに改めて圧倒されていた。
「……信じられない……こんな人たちが味方だなんて」
「さて…」
ゼイヴたち仮面の徒は、ロイに向き直る。
「ロイ、ここから先は私たちの正義のための戦いです。あなたは王国復興のために残ってください」
ロイは肩を押さえつつ呆然とする。
「え……俺だけ残るのか……?」
「ちなみにあなたが壊滅させようとしていた紅の団、他の砦は我々が壊滅させましたよ。」
ロイはホッとする。
「カレンたちも安心だ…よかったな、セリーヌ…」
クランは目を輝かせてゼイヴを見つめる。
「ゼイヴ様……すごすぎる……!」ハートの目で、完全に魅了されていた。
ロイは肩を押さえつつ、四十肩を言い訳にして、ただ走っただけ。
「俺、別に何も……」
王と王女が駆け寄り、感謝の言葉を述べる。
「ロイ殿、あなたのおかげで王国が助かりました!」
「本当に……ありがとうございます!」王女も微笑む。
ロイは心の中で思わずつぶやく。
「いや、俺……ほとんどゼイヴたちのおかげなんだけど……」
クランは小さく不満げに言う。
「なんで……おじさんの方が残るの……?」
ロイは相変わらず四十肩に苦しみながらも、王国復興の手伝いを始めることになった。
街を歩くと、道行く人々が「四十肩おじさんのおかげで助かった!」と声をかけるが、本人は戸惑い気味。
「いや、俺、ほとんど戦ってないんだけど……」
ゼイヴたちは再び去っていったが、その背中を見送るロイとクランは、少し寂しさを感じつつも、王国の未来を守るための新たな日常を歩き出す。
四十肩おじさん――英雄ではないけれど、少しずつ人々に認められ、周囲の女性たちの心も動かしていく。
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