【第84話:召喚士イレーネ】
坑道を抜け、紅の団の目をかいくぐって進んだロイたちは、謎の女性に導かれ薄暗い廃屋へと身を潜めた。
女性は荒い息を整えながら、ロイたちをまっすぐに見た。
「名は――イレーネ。私は紅の団に捕らわれた仲間を助けに来たの」
「仲間?」とセリーヌが眉をひそめる。
「人じゃなくて……魔物よ」
ロイが肩を押さえて「ま、魔物ァ!?」と声を裏返した瞬間、
イレーネの足元から黒い魔法陣が浮かび上がる。
「出てきなさい、フェルン!」
ふわりと影から飛び出してきたのは――黒猫のような小さな魔物。だが背中にはコウモリの羽が生えている。
「にゃあ! ……って、あれ? おっさん四十肩? 動きにキレがないにゃあ!」
「うるせぇッ!!」ロイは反射的にフェルンを追い払おうとするが、肩が「ビキッ」と鳴り、床に崩れ落ちる。
「ほら見ろ、やっぱり四十肩じゃにゃいか!」
「ぐぅぅぅ……!」
カレンは吹き出しそうになり、セリーヌは大剣を支えにして笑いをこらえた。
「フェルン、やめなさい!」
イレーネが叱ると、次に呼び出されたのは鎧を纏った騎士型の魔物。
「これが――オルガ」
「……主の命に従う。よろしく頼む」
重々しい声で頭を下げるオルガに、セリーヌは「おぉ、頼もしいな」と目を輝かせる。
最後に魔法陣から飛び出したのは、赤い小竜。
「ヴァルナ!」
「キュウウウウ!」
火花を吐いてロイの頭髪を焦がしかけ、慌ててババ様が杖で叩く。
「こら小僧、火遊びは後にせい!」
「キュウ!?」
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イレーネは改めて口を開く。
「紅の団に捕らわれているのは、彼らと同じ“召喚された魔物”。私の本当の相棒……。彼を助けるため、どうか力を貸してほしい」
ロイは頭をかき、仲間を見回す。
カレンは真剣な顔でうなずき、セリーヌは大剣を軽く掲げた。リュシアは小声で「……かわいそう」と呟く。
ババ様は深いため息をつき、しかし笑みを浮かべた。
「まったく……面倒な連中にばかり出会うわい」
ロイは肩を鳴らしながら笑った。
「いいぜ。仲間を助けるためなら……俺たちも全力で手伝う!」
イレーネの瞳に、希望の光が差した。
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