【第79話:紅の団・師団長との遭遇】
森を抜け、砦へ続く山道に差しかかったロイたち。
さきほどの斥候戦での勝利に少し安堵する一行だが――ババ様だけは眉をひそめていた。
「……静かすぎるのう」
「え? 敵はいなくなったんじゃないの?」セリーヌがきょとんとする。
「斥候が逃げた時点でこうなるのは分かっとった……つまり、次は本命じゃ」
その言葉の直後、空気が張り詰める。
前方の崖の上から、重い足音が響いた。
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姿を現したのは、漆黒の鎧に赤い外套を纏った大男。
顔には古傷、肩には巨大な戦斧。
「貴様ら……カルドの砦を覗き見た愚か者どもか」
声は雷鳴のように響き渡る。
リュシアが青ざめ、セリーヌが大剣を握り直す。
「……あれは、普通の兵じゃない」
「紅の団……師団長クラス!」カレンが息を呑む。
ババ様の目が鋭く光る。
「来おったか……“猛斧のガルド”」
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ガルドは戦斧を地面に叩きつけ、土煙を上げた。
「弱者を嬲る趣味はない。勇気ある者、一人で出てこい!」
ロイは肩をさすりながら前に出た。
「ここで逃げたら、誰も砦に近づけない……! 俺がやる!」
「無茶よ!」カレンが叫ぶが、セリーヌもリュシアも一歩下がる。
ババ様は小さく頷き、
「やってみるがよい。お主の“痛み”が通じるかどうかじゃ」
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ガルドの巨斧がうなりを上げて振り下ろされる。
ロイは必死にかわすが、そのたびに肩がピキリと悲鳴を上げる。
「いってぇぇぇ……! でも負けられねぇ!」
肩の痛みによる反射的な動きで、剣先がガルドの脇腹をかすめた。
「……ほう?」ガルドの口元が歪む。
しかし次の瞬間――ガルドの力強い一撃がロイを吹き飛ばし、地面に叩きつけた。
伝説の剣が手から離れる。
「ロイ!」カレンが飛び込んで拾い上げる。
ガルドは一歩踏み出すが、突然空から雷のような魔力が走り、彼の足元を爆ぜた。
「なに……!?」
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もう一つの人格――ルシアが叫ぶ。
「チャンスだ! 今のうちに退け!」
雷撃に一瞬体勢を崩したガルドは、苛立たしげに舌打ちする。
「ちっ……今はここまでだ」
師団長ガルドは撤退を選び、その姿は森の奥へと消えていった。
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荒い息を吐くロイの肩を、ババ様が治癒魔法で撫でる。
「……よくやったのう。だが、あの男はまだ本気を出しておらん」
ロイは地面に座り込み、苦笑する。
「ったく……また命拾いかよ」
セリーヌが伝説の剣を差し出す。
「ほら、あんたの相棒。次は落とさないでよね」
ロイは剣を握り直し、改めて誓う。
「必ず……砦まで辿り着いてやる」
そして夜の帳が落ちる中、一行は再び歩き出すのだった。
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