【第77話:斥候の影】
「カルドの砦……」
地図を広げながらロイがつぶやく。
セリーヌが大剣を背負い直し、にやりと笑った。
「砦なんて、いかにも本拠地って感じね。突き崩してやりましょう」
リュシアが不安げに指を組む。
「……きっと待ち伏せされています。紅の団はそう簡単に本拠地を明かす連中じゃありません」
そこに、杖を突いたババ様が口を挟む。
「待ち伏せ上等じゃ。だからこそ修行を積ませたんじゃろが」
そしてにやりと笑った。
「……まぁ、わしも気になることがあるでな。しばらくは同行してやるわい」
ロイたちは顔を見合わせ、自然と背筋が伸びる。
こうして一行は北の街道を抜け、カルドの砦を目指すこととなった。
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一方その頃、酒場を出ていったフードの男――紅の団の斥候は、森の奥で仲間と合流していた。
「奴ら、砦を目指すらしい」
「ならば先に手を打つ。師団長に報告だ」
赤い腕章を巻いた影たちは、素早く罠を仕掛け始める。
落とし穴、毒矢、幻惑の煙……どれも旅人を翻弄し、砦へ辿り着く前に削り取るための策だった。
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北へと進む街道。
ロイがふと立ち止まり、肩を押さえる。
「……なんかおかしいぞ」
「また四十肩か?」カレンが呆れる。
「いや、違う。これは……センサーが反応してる」ロイが真剣な表情。
次の瞬間――前方の地面が崩れ、巨大な落とし穴が口を開けた。
全員「うわぁぁ!」と声をあげ、寸前で踏みとどまる。
ロイは肩をさすりながらドヤ顔。
「ほらな? 俺の四十肩は、敵の罠探知スキルなんだよ!」
ババ様が杖で後頭部を小突く。
「調子に乗るでないわ! 肩痛で喜ぶ奴がどこにおる!」
(全員、うんざり顔)
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緊張が走ったのはその直後。
茂みの奥から、赤い腕章を巻いた斥候たちが現れた。
「ここから先は通さない。カルドの砦に近づく者は容赦しない!」
セリーヌが剣を構え、カレンが短剣を抜き、リュシアの瞳が揺れる。
「ルシア……お願い!」
瞬間、炎の魔力が迸る。
ロイが剣を抜き、肩を鳴らす。
「よし……ここを突破するぞ!」
その背で、ババ様は目を細める。
「……やはり紅の団、ただの盗賊ではないな。これは“軍”じゃ」
紅の団との前哨戦――カルドの砦を巡る闘いの幕が上がろうとしていた。
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