【第72話:紅の団の師団長】
町に再び現れた紅の団。
前回の二人だけでなく、今度は数十人の武装兵を従えている。
その中心に、巨大な鉈を背負った男がいた。
顔には深い傷跡、漆黒のマントを翻すその姿は、ただ者ではない。
「……やはり、あんたらか。じじいを庇った小僧ども」
町人たちは逃げ惑い、兵士たちが火を放ち始める。
ロイたちは剣を抜こうとするが、数の差は圧倒的。
ロイは一歩前に出て叫んだ。
「だったら、俺が相手だ! 一騎打ちにしろ!」
師団長は口の端を吊り上げ、豪快に笑う。
「面白ぇ。だが、俺が欲しいのは伝説の剣だけだ」
ロイは腰の細剣を抜き放つ。
「これを渡すわけにはいかねぇ!」
──戦いが始まる。
最初こそ細剣の軽さで善戦するロイ。
だが、肩を振り上げた瞬間──
「ぐおおおお! 四十肩ぁぁぁ!」
その隙を突かれ、師団長の鉈が剣を叩き落とす。
一瞬で勝敗は決まった。
地面に転がった伝説の剣を、師団長が拾い上げる。
「クク……こんな貴重な剣が、よりによって四十肩の小僧に持たれていたとはな。滑稽な話だ」
ロイは地に伏せ、歯を食いしばる。
「……返せ……俺の剣だ……!」
だが、師団長は振り返らず、兵を率いて去っていく。
炎に包まれる町を背に、ロイの拳が悔しさに震えた。
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町の外れ、焼け跡に腰を下ろしたロイ、カレン、セリーヌ。
敗北の痛みと悔しさに沈んでいると、杖をついた老婆が現れた。
「ほう……まだ生きておったか。だが、小僧、お前……戦っておった時の“肩の引っかかり”……あれは宝じゃ」
「いやいや! ただの四十肩だぞ!? 動かすたびに激痛だし、全然カッコよくねぇんだが!?」
老婆はニヤリと笑う。
「痛みを受け入れ、それを力に変えるのじゃ。わしの名は ババ様。四十肩拳法の伝承者よ」
「そんな流派あるのかよ!?!?」
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