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【第7話:受付嬢の依頼と、新たなる冒険へ】

ギルドへの報告を終え、ほっと息をついたその瞬間――

 受付嬢ミーナが、なぜか俺のほうへずいっと身を乗り出してきた。


(ちょ、距離近っ!? こういうの心臓に悪いんだって! 四十路のおじさんは刺激に弱いの!)


「実は……あなた方に、ぜひお願いしたい依頼があるんです」


 差し出された依頼書には、赤い封蝋のような印が押されていた。

 それを見たリリアが「おお」と小さく目を見開く。


「これ、重要依頼じゃないですか。普通の討伐より上のランクです」


(おいおいおい、俺まだ転生四日目だぞ!? 普通はスライムあたりでレベル上げる時期じゃないの!?)



 ミーナは表情を引き締め、説明を続ける。


「近郊の森で、魔物の異常発生が確認されています。放っておくと街に被害が出るかもしれなくて……」


 その声色には、本気で街の住人を心配している気持ちがにじんでいた。


(あぁ……やさしい受付嬢って、本当に存在するんだ……

 前の世界の役所の窓口にも一人くらいこういう人いてくれたら俺の人生もうちょいマシだったのにな……)


 リリアが早くもノリノリで頷く。

「魔力濃度の異常……面白いじゃないですか!」


(いや“面白い”って言うなよ。俺には“死にフラグ”の匂いしかしないからな?)


 セレナは真剣に腕を組む。

「街の安全がかかっているなら、受けるべき使命だ」


(あぁ……使命感のある美女ってカッコいいなぁ……でもおじさんの肩は使命感じゃ治らねぇのよ……)


 ガイルは笑う。

「よし、今回もバッチリ稼ぐぞ!」


(お前は元気すぎだろ……その半分でいいから俺に分けてくれ)


 そして、全員の視線が――俺へ向く。


「え、俺……? いやいや肩痛いし、昨日の戦いでメンタルも削られて……」


 リリアがにゅっと笑ってくる。

「おじさんがいないと調子出ないんですよね~。なんかバランス崩れるというか」


(俺、場の“調味料”みたいな扱いされてない?)


 セレナは真顔のまま、さらりと言う。

「……お前の不器用さは、戦いで妙な効果を発揮するからな」


(“妙な効果”ってなんだよ!? それもう戦力評価の項目に入れていいのか!?)


 ガイルは背中をバンバン叩く。

「おっさんがいれば、なんか勝てそうな気がするんだよな!」


「それ完全に迷信じゃねぇか!!」



 そんな俺たちのやりとりを聞いたミーナは、ふっとやわらかい笑顔を見せた。

 その笑みは、ほんの少しだけ寂しそうで――けれど温かかった。


「やっぱり……あなた方にお願いして良かった。どうか、気をつけてくださいね」


 まっすぐな瞳で見つめられ、心臓がドクンと跳ねる。


(ま、まただ……! この受付嬢、やさしさの暴力を平然と使ってくる……!

 ダメだ……こんなの続いたら、本当に惚れ――)


「おじさん、顔赤いですけど? 発情ですか?」

 リリアが容赦なく突っ込んできた。


「違うわ!! お前ほんと容赦ねぇな!?」


「ふふっ、仲が良いんですね」

 ミーナがほんのり笑う。


(あぁあああ……この“ほんのり笑う”が一番心臓に悪い……!!!)



 こうして俺たちは、森の異常を調査する新しい依頼を受けることになった。


 まだ肩は痛い。

 まだ戦闘は怖い。

 でも――


 仲間がいて。

 自分を認めてくれる人がいて。

 なぜか最近ちょっとだけ人気出てきて。


(……いや、もしかして俺、異世界で第二の人生ワンチャンある?

 いやいや、落ち着け。慢心したら死ぬぞ? 四十肩おじさんは謙虚さが命……!)


 そんな風に心でツッコミを入れながら、俺は再び冒険へと踏み出した。


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