【第68話:迷いの森と四十肩の奇跡】
村を出発したロイとカレンは、東へと進んでいた。目的地はまだ遠く、森を抜ける必要がある。
ロイは肩をぐるぐる回しながら呟く。四十肩が痛むのを気にしつつ、歩みを進める。
やがて二人は、濃い霧と曲がりくねった小道が続く「迷いの森」に足を踏み入れた。
「この森、どうにも出口が見つからないな…」カレンが地図を広げるが、地図の道筋はまるで意味をなさなかった。
「ぐぬぬ…肩も痛いし、方向感覚もおかしい…!」ロイは四十肩で腕をぶんぶん振るたび、思わず転びそうになる。
すると茂みからガサゴソと音がした。次の瞬間、何かが飛びかかってきて、ロイの肩にかぶさるように噛みついた。
「ぎゃあああ!肩が!肩があああ!」ロイは四十肩の痛みに絶叫しつつ、体をよじる。
「うわっ、人間…!?」その相手は人間らしい姿をしていたが、血走った目と空腹がすさまじく、最初は獣だと思っていた。
その人間──いや、人間の女剣士、セリーヌは、何日も森で迷子になり、空腹でフラフラだったのだ。ロイの手からこぼれた食料を見て、やっと自分が人間に噛みついていたと気づく。
「…ご、ごめんなさい、あなた、人間だったのですね…」セリーヌは赤面しつつ、力なく崩れ込む。
「いやいやいや、噛むなよ!」ロイは四十肩で片腕が使えず、必死に押しのけるが、逆にその痛みで妙な動きが生まれ、転びながら森をさまよい続ける。
カレンは「ロイ…その動き、意味あるの?」と半笑いでつぶやく。
ロイは手持ちの食料をほとんどセリーヌに渡した。
「これで少しは生き延びろ…肩のせいで、こんなことしかできんが…」
セリーヌは目を潤ませて、深く頭を下げた。
「命の恩人…!ロイ様、これからはあなたに忠誠を誓います!」
そして奇妙なことに、ロイの四十肩によるグニャグニャした動きが、偶然にも森の迷路のような道を突破するルートを生み出した。肩の痛みに翻弄されつつも、三人は迷いの森を脱出することができたのだった。
「…肩って、意外な才能になるな…」ロイは肩をさすりながら、苦笑する。
「才能…ですか…?」カレンは首をかしげるが、セリーヌは真剣な目でロイを見つめていた。
「ロイ様のためなら、どこまでも!」
こうして、新たな仲間・セリーヌを加えた三人旅が、少しずつ賑やかになっていくのだった。
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