【第67話:旅立ち】
村に戻ったロイとカレンは、奴隷施設から解放した子どもたちを無事引き渡した。
村人たちは泣きながら彼らを迎え入れ、抱きしめ、名を呼んだ。
「ありがとう……! ありがとう、ロイ殿!」
「カレンさん、本当に……!」
あたたかな涙の輪の中で、ロイはどこか気恥ずかしそうに頭をかいた。
その瞬間――。
「イッ……タタタタッ!」
腕を上げた拍子に、四十肩が悲鳴をあげた。
村人の感謝の視線の中で、変な格好のまま固まるロイ。
「お、おじさん大丈夫!?」
「カッコつける場面で肩やるのやめて!」カレンが盛大にツッコんだ。
村人たちの涙は一瞬にして笑いに変わった。
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その後。
広場の片隅で、ロイはダリオと向き合っていた。
「……本当に、もう大丈夫なのか?」
ロイの問いに、ダリオは力強くうなずく。
「俺とユリアがいる。村は任せてくれ」
隣でユリアも弟ユアンの肩に手を置き、にっこり笑った。
「ユアンだって、これからは村を支える一人だもの」
「お、お姉ちゃん、僕はまだ子どもだよ!」と赤面するユアンに、村人たちの笑い声が響いた。
ロイは安堵の息を吐く。
「なら……心配はないな。俺はここを出る」
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「ちょっと待って」
声をかけたのはカレンだった。
「勝手に一人で行くつもり? 私も行くわ」
「えっ? いや、危険だぞ」
「危険なのは知ってる。でも……放っておけないのよ。あんた見てると」
ふいにロイが子どもたちへ笑顔を向ける姿を見て、カレンは頬を少し赤らめる。
(……なんで、こんな人に惹かれてるんだろ)
自分でも不思議そうに首を振った。
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夕暮れ。
二人は荷をまとめ、村の門へと歩き出す。
背後から、子どもたちの声が響いた。
「いってらっしゃい、ロイ兄ちゃん! カレン姉ちゃん!」
「また帰ってきてねー!」
ロイは片手を大きく上げて応えようとしたが――。
「イッテテテテッ!」
「おじさんっ! そこで肩やる!?」
子どもたちがどっと笑い、村に明るい声が広がった。
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村を出た丘の上で、ロイは小さく呟く。
「……少しはカッコよく見えてたかな」
「そうね」
カレンは横顔で答えた。
「ちょっとは、ね」
夕陽に照らされる彼女の横顔は、ほんのり赤く染まっていた。
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