【第60話:追撃の兵と三人の戦い】
森を抜けるときには夜になり、子供たちと一行はなんとか安全な道へと出た。
子供たちがほっと胸をなでおろす。
だがロイは、痛む肩を抑えながら眉をひそめていた。
「……ちょっと待て。何か足音が――」
その言葉と同時に、木立の向こうから金属のきしむ音が響く。
松明の赤い光が次々と近づき、数人の兵士たちが現れた。
「やはり逃げていたか……!」
「子供どもを返せ! そして、その怪しい男もな!」
兵士の視線はロイと、隣に立つダリオに突き刺さる。
「チッ……見つかったか」ダリオが構える。
ロイは大きく肩を回した。
「くそ……今夜は安静にして寝たかったのに。こうなったら――」
(四十肩必殺、夜戦モードだ!)
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兵士たちが一斉に剣を構え突撃してくる。
「うおおおおおおッ!」
ロイは痛みに顔をしかめながらも肩をぶん回し、兵士の剣を強引に弾き飛ばす。
「ぐあっ!?なんだその動きは!」
「見てるだけで肩が……!?」
(そうだろうそうだろう、俺の技は見るだけで痛みを伝染させる……!)
兵士たちが怯んだ隙に、ダリオが低く踏み込み剣を薙いだ。
その動きは洗練されていないが、力強く、実直そのものだった。
「俺は……ユリアを、村を守るためなら……絶対に退かない!」
その叫びに、ロイは思わず口元を緩めた。
(いいぞダリオ……なんかお前が主人公に見えてきたけどな!)
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その時、後ろから小柄な影が飛び出した。
「ロイさん!私も戦います!」
カレンだった。
双剣を抜き、躊躇なく兵士へと飛びかかる。
「危ない、下がれ!」ダリオが声を張るが、カレンは鋭い動きで兵士の足を斬り払い、鮮やかに転倒させた。
「やるなぁ!」ダリオが感心する。
(お、おいおい……妹ポジションのはずが、もう戦力になってるじゃねえか……)
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三人は背中を合わせるように陣を組み、次々と押し寄せる兵士たちに応戦した。
ロイは四十肩を大袈裟にアピールしながら肩をぶつけ、痛みに悶絶するふりをしつつ剣を弾き飛ばす。
ダリオは無骨な剣さばきで確実に敵を減らしていく。
カレンは軽快な双剣で隙を突き、敵の数を削る。
「ぐっ……数は少ないが、なかなかしぶとい!」
「任せろ。肩の痛みが俺を強くする!」
「いや、それ絶対ウソでしょ!?」
ロイの叫びに、兵士たちすら一瞬ひるんだ。
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やがて最後の一人が倒れ、森に静寂が戻った。
息を切らすダリオの横で、カレンは内心嬉しそうに剣を収める。
「やりました・・・やっと助けられた・・・」
ロイは四十肩を押さえつつも、どこか満足そうに笑った。
(ふぅ……しかし俺よりも、ダリオとカレンの方がキラキラして見えるんだが……?
……もしかして俺、今回“地味に痛そうなおじさん”役じゃないか?)
そんな内心の不安を抱えながらも、子供たちの安堵の笑顔がその夜の勝利を告げていた。
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