【第58話:囚われのロイ】
「カレン! 子供たちを連れて逃げろ!」
ロイは背中で子供たちをかばい、剣を肩に担ぐ。
「えっ、でも――」
「いいから! ここは俺に任せろ! 四十肩の俺にしかできない戦い方がある!」
半分冗談のように言ったその顔は、妙に真剣で。カレンはきゅっと唇を噛み、うなずいた。
「……絶対に、あとで合流してくださいね!」
そう言って、カレンは鉄格子を器用に壊し、子供たちを連れて影のように地下道を駆け抜けていった。
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ロイは兵士たちの前にどっかり腰を据え、わざと大げさに肩を押さえる。
「ぐぬぬぬ……いってぇぇぇ……! 四十肩が暴れだしたぁぁ!」
兵士たちが一瞬戸惑ったすきに、ロイはわざと剣を落とし、転んだふりをする。
「ひぃぃぃ! 剣が重くて持てん! いや、肩がぁぁぁ!」
「な、なんだこいつ……?」
「ただの間抜けなオッサンじゃないのか……?」
笑いが起こりかけたそのとき。
「……下がれ」
低く冷たい声が響いた。
奥の階段から、一人の男が姿を現した。豪奢な服に、禍々しい装飾の杖を手にした初老の男――この奴隷施設を仕切る館長だ。
「騒がしいと思えば……見知らぬ流れ者か。子供を逃がしたな?」
「し、知らん! 俺はただトイレを探してただけで……ぐあっ、肩がッ!」
ロイの必死の言い訳も、館長の鋭い目は一切揺らがない。
「くだらん芝居は通じん」
次の瞬間、杖から黒い鎖が放たれ、ロイの体を絡め取った。
「なっ……! まさか、拘束魔術!?」
「おとなしく牢で腐るがいい。仲間もすぐに捕らえてやる」
ロイは鉄格子の中へ投げ込まれた。
「くそ……! カレン、子供たち……無事に逃げ切ってくれよ……!」
四十肩の痛みを感じながら、ロイは鉄格子をにらみつけた。
自分が捕らわれたことよりも、子供たちとカレンの安否の方が気がかりでならなかった。
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