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【第55話:奴隷施設への道中】

 森の奥へ進むと、徐々に人の気配は消え、かわりに獣の唸り声や羽ばたきが耳に届く。


 ロイは肩をぐるぐる回しながら、ぶつぶつ呟いていた。


「よし……今日こそは四十肩を克服するぞ……“回転奥義・肩車破天剣”の予行練習を……」

「……なにその奥義。どう考えても痛そうなんだけど」


 隣を歩くカレンが冷たい視線を向ける。


「お嬢さん、戦いはね、ノリと勢いが大事なんだよ。肩が痛かろうが、イメージがあれば技になる!」

「イメージだけで敵が倒せるなら、世界は平和よ」

「……言うなぁ」


 軽口を交わしながらも、カレンの手はすでに腰の短剣へ伸びていた。気配を察知したのだ。


「来る!」


 茂みを割って現れたのは、二足歩行の狼型の魔物。赤い目を光らせ、牙をむき出しにして襲いかかってくる。


「うおおおおっ!」

 ロイは大げさに腕を振りかぶった――その瞬間、肩が「ガクッ」と外れそうになる。

「いってえええぇぇぇ!!!」

「このタイミングで!?」


 しかし痛みに身をよじった勢いで、ロイの肘が魔物の顎に直撃。狼は呻き声をあげて吹っ飛んだ。


「……今の、狙った?」

「も、もちろん狙ったに決まってるだろ……(涙目)」

「……(こいつ、本当に生き延びてきたのが奇跡なんじゃない?)」


 カレンは心の中でため息をつきつつも、短剣を抜いて残りの魔物を軽やかに切り伏せる。その動きはしなやかで、森の風のようだった。


「すげぇな……。あんた、ただの村の用心棒じゃねえな」

「……今はただのカレン。それ以上でも以下でもない」


 そう言いながらも、彼女の瞳の奥にわずかな迷いが浮かんでいた。



 魔物を退けて再び歩き出す二人。森を抜けると、遠くに黒い石造りの建物が見えてきた。重苦しい雰囲気を漂わせるそれが、奴隷施設だった。


「……あそこか」

「そう。子供たちを囚えている檻」


 カレンの表情は硬い。だがその横で、ロイは拳を握りしめ――肩を押さえて呻いた。


「ぐ……! やっぱり四十肩が……! でも……でも子供は助ける!」

「……(やっぱり放っておけない。こんな無茶なおじさん、見てられない……)」


 カレンはため息をつきつつも、ほんの少し口元を緩めた。



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