【第50話:そして・・・】
虚骸軍との死闘が終わった。
ラグナは竜の姿を保ったまま、その巨躯を揺らして大きく息を吐く。神龍である彼があれほど疲弊する戦いは、これまでになかっただろう。
ミアは短剣を鞘に収め、両手をぶんぶん振りながら「勝ったー!」と叫び、ルカはその声に顔を赤らめ「べ、別に……あんたのために戦ったわけじゃないんだからね!」とお決まりのセリフ。フィオナは心の声で(でも、ルカちゃん嬉しそう)と突っ込み、ティナは「えへへ~、ご飯まだかなぁ」と天然を炸裂させていた。
そして、セレナ。
彼女の放った奥義は、最後のボスを確かに屠った。
その瞬間、皆の視線が彼女に集まる。
ロイは四十肩を押さえながらも、誇らしげに言った。
「……セレナがいれば、この国は大丈夫だ。仲間もいる。俺は……最高に幸せだ」
街に戻ると、すでにお祭りの準備が始まっていた。
子どもたちは紙灯籠を振り回し、大人たちは酒樽を開け、屋台には焼き鳥や揚げ団子が並ぶ。英雄たちの帰還を祝うように、笛や太鼓が鳴り響いた。
ロイは杯を掲げ、豪快に飲み干す。
仲間たちはそんな彼を囲み、口々に祝福を送る。
「ロイさん、肩はもう大丈夫ですか?」と聖女エリス。
「ははっ……まだ痛ぇよ。だがな、今が人生で一番楽しい!」
どっと笑いが起きる。
その後も宴は続き、やがてロイは心地よい酔いと仲間の笑い声に包まれながら、ふっと意識を手放した。
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……風の音で目を覚ました。
ロイは目をこすり、あたりを見回す。そこは街でも祭りでもなく、見渡す限りの草原。澄んだ青空と、どこまでも広がる緑。
そして、ひとりの男が立っていた。
仮面をかぶり、長い外套を風に揺らす存在――ゼイヴ。
「ここは……どこだ?」
「新しい世界だ」
淡々と告げるゼイヴ。
彼の声は風に溶け込むようで、しかし確かにロイの胸を撃ち抜いた。
「仮面の徒は、異世界を渡る者たち。……お前もまた、異世界を渡った者だ」
「俺も……?」
ロイの頭に、これまでの冒険がよぎる。仲間たち、戦い、そして今の幸せ。
ゼイヴは仮面越しに静かに言葉を続ける。
「選べ、ロイ。お前の正義を。お前の歩む道を」
その言葉を残し、ゼイヴの姿は風とともに掻き消えた。
残されたのは、広大な草原と――
「……やっぱり肩が痛ぇ……」
ロイの呟きだけだった。
四十肩の痛みは消えていなかった。
だが、その痛みを抱えたままでも、彼は進むだろう。仲間と、そして新たな世界で始まる物語へ――。
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