【第49話:虚骸軍、ラストバトル】
街を覆う黒雲がさらに濃さを増し、雷鳴のような咆哮が轟いた。
その中から現れたのは、虚骸軍の最後のボス――全身を黒い鎧に覆った巨躯の魔人だった。
血のように赤い双眸が光り、圧倒的な殺気が戦場全体を支配する。
「……来たな」
ロイが剣を構え、仲間たちが後ろに陣を組む。
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「ラグナ! 頼む!」
ロイの声に応じて神龍ラグナが再び巨大化し、天を覆うほどの翼を広げる。
咆哮と共に吐き出された白銀の光線が、虚骸軍の残兵を一掃した。
だが――ボスはその光線すらも片腕で弾き返し、地面を割り砕いた。
「ぬぅ……ここまでか」
ラグナの体が縮み、息を荒げながらミニマム姿に戻る。
「すまぬ……ロイ。残りは……お前たちで……」
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「やらせはしない!」
ガイルが獣人の脚力で跳躍し、爪を閃かせてボスの兜に裂傷を刻む。
「いっけぇぇぇ!」
ミアは両手の短剣を回転させ、機敏に斬り込みを入れる。
「うわっ、固っ!? でもまだまだぁ!」
フィオナの矢が次々と飛び交い、心の声も爆発する。
(ロイぃぃぃ! 絶対無茶しちゃダメよぉぉぉ! でもその背中が……好き……!)
リリアの炎とシルヴィアの数式魔法が炸裂し、ルカとティナが前衛で押し留める。
リゼルの黒鎖が幾度もボスの動きを封じ、エリスが仲間の傷を癒す。
「みんな……絶対に倒すぞ!」
セレナの声が戦場に響いた。
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ボスが咆哮と共に衝撃波を放つ。前衛が押し飛ばされ、仲間が倒れる。
「まだ……だ……!」
ロイがよろめきながら立ち上がる。
肩の痛みは限界を越えていた。
それでも、四十肩の痺れを逆手に取り、剣の軌道を不規則に跳ねさせる。
「はああああああっ!」
全身全霊の一撃がボスの胴を深々と裂き、黒い血が飛び散った。
「やったか……!」
仲間たちが息を呑む。
しかし、ロイの膝が崩れ落ちる。
「くっ……ここまでか……」
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ボスはまだ立っていた。傷を押さえ、怨嗟の咆哮をあげて剣を振り上げる。
その瞬間――
「奥義――《蒼閃断》!」
セレナが全身を光に包み、剣を振り抜いた。
その刃は夜空の流星のように輝き、ボスの胸を貫いた。
「ぐ……うぅぅぅおおおおっ!」
巨躯が崩れ落ち、地を揺るがしながら沈んでいった。
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静寂が訪れる。
仲間たちが駆け寄り、倒れ込むロイを囲んだ。
「ロイっ! 無事!? 無茶しすぎよ!」
「ほんと……ロイってば、格好つけすぎなんだから……!」
「でも……あの姿、すごく、頼もしかった……」
仲間たちの声が次々と重なり、ロイはうっすら笑みを浮かべた。
「……俺だけじゃない。みんなで……勝ったんだ」
その言葉に、誰もが頷いた。
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