【第48話:虚骸軍、最後の侵攻】
それは突然だった。
街の上空を覆い尽くすように、黒雲が渦を巻いた。耳を劈くような咆哮と共に、虚骸軍の軍勢が押し寄せてくる。
「来やがったな……!」
ロイは剣を握りしめ、仲間たちの前に立った。
⸻
「みんな、配置につけ! 街を守り抜くぞ!」
セレナが鋭く号令を飛ばす。
フィオナは矢を番えながら、心の声がだだ漏れる。
(ロイがかっこよすぎる……はぁ、惚れ直す……でも今は戦闘よ! 冷静、冷静に……!)
リリアが両手を掲げ、詠唱を響かせる。
「燃え盛れ、炎の奔流よ――虚骸を焼き尽くせ!」
火柱が軍勢を飲み込み、数体が黒煙と共に崩れ落ちた。
ルカは大剣を振り抜き、迫る兵をなぎ払う。
「ロイ! あんたの背中は私が守るから、絶対倒れないでよ!」
ティナは天然に笑いながら、巨大なメイスを軽々と振るい、地面ごと敵を粉砕した。
「えへへ~♪ なんかいっぱい倒れたよー!」
⸻
「傷よ癒えよ……聖なる光よ!」
エリスの祈りが戦場を包み、負傷した冒険者たちの傷が次々と塞がっていく。
しかし――ロイの四十肩は治らなかった。
「……なぜ……? やっぱり、これは神の試練なのですか?」
エリスが悲しげに呟く。
一方、リゼルは鋭い眼差しで虚骸軍を睨みつける。
「私はもうあの軍には戻らない……! この刃で断ち切ってみせる!」
黒い鎖のような魔力を操り、敵を拘束しては仲間の攻撃へと繋げていった。
⸻
空から巨大な影が舞い降りた。
ミニマム姿だったラグナが、眩い光と共に本来の神龍の姿へと戻る。
「――吠えよ、ラグナ!」
ロイの声に応じ、神龍は天空を揺るがす咆哮を放った。
その衝撃波だけで虚骸軍の隊列は崩れ、空を飛ぶ魔獣は一斉に墜落した。
「す、すごい……これが神龍の力……!」
ミーナが息を呑んだ。
⸻
しかし、崩壊した軍勢の奥から、異様な気配が迫る。
仮面をつけた幹部格の虚骸兵が数体、ゆっくりと歩み出てきた。
「やれやれ……人間どもが思った以上に粘るとはな」
その声は冷酷で、響くだけで周囲の空気が凍りつく。
「全員、気を抜くな! ここからが本番だ!」
ロイは剣を構え直し、仲間たちも一斉に応じた。
⸻
セレナとミアが連携し、剣と短剣で幹部を翻弄する。
ルカとティナは前衛を固め、圧倒的な力で押し返す。
リリアとシルヴィアが詠唱を交わし、炎と光、そして不可思議な数式の魔法陣が戦場を埋め尽くした。
「ロイ! 決めてくれ!」
「任せろ!」
ロイは深く息を吸い込み、四十肩を逆手に取った独自の剣技を繰り出す。
肩の痛みに合わせるように剣筋が鋭く跳ね上がり、幹部の一人を両断した。
「な……!?」
虚骸兵が驚愕の声を上げ、黒煙となって消えた。
⸻
だが、それはまだ「前哨戦」に過ぎなかった。
遠くから、さらに巨大な気配が迫る。
虚骸軍の最後のボス――その影が、ついに姿を現そうとしていた。
⸻




