【第46話:試練の襲撃 ― セレナの奥義】
山奥の庵での修行は、厳しくも充実していた。
セレナは木剣を振るい、瞑想を重ね、師匠の教えに必死に食らいついていた。
その姿を見て、ロイも思わず感心する。
「……やるじゃないか、セレナ。あの集中力は俺には無理だな」
「ロイさん、四十肩だからってサボっちゃだめですよ!」
無邪気にミアが突っ込む。
「ぐっ……お前もだいぶ馴染んできたな……」
ロイは頭を抱えたが、どこか嬉しそうだった。
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だが、その静けさを破る影があった。
夜。庵を包む森の奥から、不気味な気配が漂ってきた。
ロイがすぐに立ち上がり、剣を構える。
「……来やがったな」
黒い霧を纏った影――虚骸軍の兵たちが森から姿を現す。
しかも今回は、ただの斥候ではなかった。大柄な魔族が槌を担ぎ、背に翼を生やした異形の幹部級も混じっていた。
「師匠の庵まで……!?」
セレナが息を呑む。
「やはり、ここまで目を付けられておるか」
師匠は杖を握りしめ、静かに構えた。
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「来るぞ!」
ロイが叫び、正面から突撃する魔族と剣を交えた。
斧が振り下ろされる。ロイは四十肩を回して無理やり軌道を逸らす。
「――おっさんスピン!」
半ば強引に体を回転させ、魔族の腹に蹴りを叩き込む。
「なんだそれ!? でも効いてる!」
ミアは短剣を振るい、素早く敵の足を狙う。
「えいっ、えいっ! ……ロイさん、後ろ!」
「わかってる!」
背後からの突きを紙一重でかわし、斬り返すロイ。
一方、セレナは剣を構えていたが、敵の圧に体が震えていた。
「私……また、足がすくんでる……?」
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「セレナ!」
師匠の声が響く。
「恐怖に囚われるな! 己を縛る鎖を断ち切れ! 剣は心の在り方を映すものだ!」
「……心の在り方……!」
セレナは剣を握り直し、必死に前を見据えた。
「私は……! 私は、仲間と共に戦うんだ!」
その瞬間、剣が淡い光を帯び始める。
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迫る幹部級の魔族が斧を振り下ろす。
セレナは一歩踏み込み、渾身の力を込めて剣を振り抜いた。
「――奥義、《蒼閃断》!!」
蒼い閃光が夜を切り裂き、魔族の巨体を真っ二つにした。
地面が震え、光が収まると、敵の姿は塵となって消えていた。
「な、なんだ今の……!」
ロイが目を見開く。
ミアも口をぽかんと開けていた。
「す、すごい……! セレナ先輩、かっこよすぎます!」
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残った虚骸軍の兵は、仲間の幹部を失ったことで一気に動揺し、森の奥へと退散していった。
「……やったのか……」
ロイが剣を下ろす。
セレナは肩で息をしながら、剣を抱きしめた。
「これが……私の……奥義……」
師匠は頷き、静かに言った。
「よくやった、セレナ。お前はついに、自らの恐怖を乗り越えた」
その言葉に、セレナの瞳は涙で滲んでいた。
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戦いが終わった後、庵に戻った仲間たち。
「セレナ先輩、本当にすごかったです! 私ももっと頑張らなきゃ!」
ミアは興奮気味に飛び跳ねる。
「お前は十分頑張ってるよ。ただ元気すぎて俺の肩が余計痛くなるけどな……」
ロイは苦笑しながら肩を回した。
その光景を見て、師匠は小さく頷いた。
「……セレナ。お前の修行は終わった。だが、この子もそろそろ街で学ぶべき時だ」
「えっ……!」
ミアが驚き、目を丸くした。
「セレナと共に行け。仲間として」
その言葉に、ミアの顔がぱっと輝いた。
「はいっ! やったー! ロイさん、これからよろしくお願いします!」
「お、おう……まあ、よろしくな」
ロイは少し気圧されながらも笑った。
こうして、セレナの奥義習得と、新たな仲間ミアの加入が決まった。
だが、その裏で虚骸軍は、さらなる侵攻の準備を着々と進めていたのだった――。
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