【第45話:旅立ち ― セレナの修行へ】
山奥の庵にて、セレナとロイ、ラグナは師匠と新弟子ミアと向き合っていた。
「さて、セレナよ。奥義を授ける前に、まずは心身を整えねばならん」
師匠は庭に置かれた木剣を手渡す。
「はい、師匠!」
セレナは両手で剣を握り、真剣な眼差しを浮かべる。
一方、隣ではミアが跳ねるように立ち上がった。
「じゃあ、私も一緒にやります! 師匠の教え、全部吸収しないと!」
「お、おう。元気だな……」
ロイは思わず後ずさる。
ミアは腰の二本の短剣を抜き、軽やかに構えた。
「短剣は素早さが命なんです! えいっ!」
彼女は縦横無尽に動き回り、草を切り、木を蹴り、まるで子どものように全力で稽古を楽しんでいる。
「……あの子、すごく元気だね」
セレナは苦笑いを漏らすが、すぐに真剣な表情に戻った。
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師匠はセレナに目を向ける。
「お前には、“心を静めて力を解き放つ”技を学ばせる。だが、その道は容易ではない」
セレナは深呼吸し、木剣を振り下ろす。
だが、焦りが動きに出て、すぐに体勢が崩れる。
「くっ……!」
「まだだ。お前の心は戦場の恐怖に縛られている。まずはそれを断ち切れ」
師匠の声が響く。
セレナは悔しさに拳を握り、再び構えた。
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その様子を横で見ていたロイに、ミアが近づいてきた。
「ねえ、ロイさんっていうんですよね? 師匠以外の男の人って初めてで……ちょっと、なんか、不思議です!」
「お、おう……。いや、そんな珍獣みたいに見られても困るんだが」
「いえ! なんかこう……たくましいというか……あ、でもちょっと四十肩っぽい動きですね!」
「お前、初対面でなかなかストレートだな!?」
ロイはがくりと肩を落とした。
ラグナがくすりと笑う。
「フッ……また面倒なのが仲間に加わりそうだな」
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夕暮れ。
汗でびしょ濡れになったセレナは、ついに木剣をまっすぐ振り下ろすことに成功した。
「……よし。その一撃には迷いがなかった」
師匠が頷く。
「セレナ、明日からは奥義の本格修行だ」
「はい……! 必ず、習得してみせます!」
セレナの瞳は強い光を宿していた。
その横で、ミアは無邪気に笑った。
「わーい! 私もセレナ先輩と一緒に頑張ります!」
こうして、セレナの修行とミアとの交流が本格的に始まった。
だが、この小さな庵にまで、虚骸軍の影が迫っていることを、まだ彼らは知らなかった――。
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