【第41話:神龍の修行、四十肩を制すべし】
街を襲った虚骸軍、そして続けざまに現れたマーヴォ。
その圧倒的な力に、ロイは未熟さを痛感した。
「……やっぱり俺、このままじゃ通用しねぇ」
瓦礫の街を見回しながら、ロイは拳を握りしめる。
「ロイ。今こそ力を制御するときだ」
低く響く声と共に、ラグナが現れる。
普段は小さな姿のまま肩に乗っている神龍は、今回は威厳ある龍の姿に戻っていた。
その黄金の瞳がロイを見据える。
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「お前の肩に宿る力は、確かに強大だ。だが――制御が甘すぎる」
「そんなこと言ったって、俺はただの四十肩持ちのおじさんなんだぞ……」
「言い訳をするな!」
ラグナの咆哮と共に地面が震え、ロイは尻もちをついた。
「ひっ……!」
フィオナが木陰からこっそり覗き、心の声を漏らす。
(きゃー! ラグナ様カッコいい! でもロイさんが怒られてる姿も意外と……あれ? なんでドキドキしてるの私!?)
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ラグナが課した修行は、一見すると意味不明だった。
「その岩を肩で押せ」
「肩で!?」
「そうだ。腕を使うな、肩だけでだ!」
ロイは岩に肩を押し付け、呻きながら転がす。
「ぐぬぬぬ……っ、いってぇえええ!」
「痛みに耐えろ! それこそが、お前の力の根源だ!」
横でティナがぱちぱちと拍手する。
「ロイさん、がんばってくださーい! なんだか、すっごく可愛いです!」
「可愛いじゃねぇ! 俺はカッコよくありたいんだ!」
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数日間の奇妙な修行の末、ロイは少しずつ肩の痛みと光の力を一致させる感覚を掴み始めた。
「……来る……! 肩が……ただ痛いだけじゃない……!」
「そうだ、痛みを力に変えるのだ。制御するのではなく、共に在るのだ!」
ラグナの声が響く。
ロイの肩が発光し、拳を振ると光の波動が一直線に走った。
周囲の木々を薙ぎ払い、大地に光の道を刻む。
「おおおっ……!」
仲間たちが息をのむ。
「……やっと……ちょっとわかってきたかもな」
ロイが肩をぐるぐる回す。
「ただ、めっちゃ痛いのは変わらねぇけどな!」
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「ロイさん! そのポーズ、めっちゃキマってました!」
ティナが目を輝かせる。
「ポーズじゃなくて、痛くて肩を抑えただけだ!」
「ロイさん……痛みに耐える男の背中……素敵です」
セイナが思わずつぶやく。
(え? ちょっと待って私、何言ってんの!?)
横でフィオナが矢を握りしめ、ギリギリと歯ぎしりする。
(なんでみんなロイさんにときめいてんのよー! おじさんなのにー!)
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こうしてロイは「痛みを制御する」術を少しずつ身に付けた。
しかし、それでも完成には遠い。
「まだだ。お前の力は半ばも開いていない」
ラグナが告げる。
「……ああ、わかってる」
ロイは肩を回しながら空を見上げる。
その空の彼方では、虚骸軍の旗が再び翻っていた。
そしてマーヴォもまた、冷ややかに彼らを見据えていた。
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