【第4話:四十肩おじさん、初めての依頼】
翌朝。村の広場に、場違いなほど肩をさすっているおじさんがひとり――俺だ。
昨日のダンジョンでの功績(※偶然)を買われ、気づけばリリア、セレナ、ガイルの三人によって冒険者ギルドへと連行され、強制的に登録まで済ませられてしまったのだ。
そして今、目の前にあるのが……
「……ゴブリン退治、ねぇ」
掲示板の羊皮紙を見た瞬間、俺の肩がさらに重くなる。
「心配はいらない。弱い個体ばかりの群れらしい」
セレナが淡々と言う。
だが俺にとっては
“弱いゴブリン=普通に死ねるゴブリン”
である。
「俺、魔法も剣も使えないし……肩も上がらんし……」
とぼそっとつぶやくと、リリアが即答した。
「じゃあ荷物持ちくらいはしてください。戦場で立ってるだけの的ほど邪魔な存在もないんですから」
刺さる……。だが正論すぎて何も言えない。
⸻
■ ゴブリンの巣へ向かう道中
俺は巨大な荷物袋を肩に担ぎ、ぜぇぜぇと息を切らしていた。
(誰だよ……中に鍋とか釜とか入れたの……)
「おっさん、ペース遅いぞー!」
ガイルが元気に跳ね回る。若さって残酷だ。
「無理はするな。お前は……もう仲間なんだから」
セレナが短く言った。
――仲間。
そう言われるのなんて、何年ぶりだろう。
心の奥がじんわり温かくなった。
(……この世界、意外と悪くないのかもしれない)
⸻
■ ゴブリンの巣前
洞穴の前に立った途端、奥からギャギャギャッ!と奇声をあげたゴブリンたちが一斉に飛び出してきた。
「よし! 俺が突っ込む!」
「援護するわ、邪魔したら許さないけど」
「全員まとめて燃やし尽くすわよ!」
三人が瞬時に配置につく姿を、俺は荷物を抱えたまま見守るしかなかった。
気づけば、胸が熱くなっていた。
「……すげぇな、こいつら」
本音が漏れた。
⸻
■ 終わった頃に終わる男
戦闘は、驚くほど早く終わった。
ゴブリンは全滅。三人は無傷。
一方の俺は、戦ってすらいないのに汗だくで肩を押さえている。
「任務完了だな」
「ふぅ、まあこんなものね」
「もっと強い魔物来ないかなぁ!」
三人が爽やかに笑う中、俺はというと……
「……いってぇ。戦ってなくても四十肩は痛ぇんだよ……」
ぽつりと言ったその瞬間、三人が硬直し――
「ぷっ……!」
「ちょっと、その落差……反則ですよ……!」
「ハハハハハ!!」
大爆笑。
笑われるのは恥ずかしいはずなのに、不思議と嫌じゃない。
むしろ、胸が軽くなっていく。
(……情けなくても、役に立てなくても。
ここで生きていけるかもしれない)
そんなことを、ふと本気で思ったのだった。




