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【第35話:ロイたちと、仮面の徒の噂】

 港町フェルメナが襲われた――

 その凶報は、風よりも早くロイたちの元へ届いた。


「えっ、また虚骸軍……!? フェルメナは無事だったのか!?」


 ロイの声は思わず裏返った。

 だが、次に告げられた報せが、さらに彼を混乱させた。


「……仮面の徒が現れてな。虚骸軍の幹部を、一撃で仕留めたらしい」


「……い、い、いちげき? いや、待て。それ、俺たちが死ぬほど苦戦したやつだよな!?」

 ロイの顔から、血の気が引いていく。


◆ ◆ ◆


「仮面の徒……謎に包まれた集団、ね」

 リリアは腕を組み、魔眼を細めた。


「幹部をポンって!? 反則にも程があるわよ!!」

 フィオナは叫びながら脳内で比較する。

(こっちは汗と砂まみれでロイの脇の匂いを背負いながら必死だったのに……向こうは、え、なに? “はい終わり”みたいなノリで倒したの!? こちとら生死かかってたんだけど!?)


「おいフィオナ、顔が闘技場の猛獣みたいになってるぞ」

「なってないですぅ! 私は清らかな乙女ですから!!!」


◆ ◆ ◆


「でも……仮面の徒って、街を救ってくれたんだよね? 素敵な人たちだと思うなぁ」

 セレナがぽわんとした声で言う。


「素敵とか言わないでください! ロイさんを守れるのは私です!」

 ティナが即座に噛みつく。


「ちょ、ちょっとティナ!? ロイさんを守るのは私で――」

「はいはい、恋愛バトルは他所でやれよ」

 ルカが冷めた顔で遮る。


「えっ、ちょ、なんで俺が原因みたいな空気になってんだ!?」

 ロイの抗議は、女性陣の火花の中に飲まれていく。


◆ ◆ ◆


 その中で、エリスが静かに言った。


「でもロイさん……感じませんか? “差”を」


「……差?」


「はい。私たちは全員で連携して、命を削るように戦って、ようやく幹部を倒せました。でも――仮面の徒は、その必要すらなかった」


 ロイの胸の奥に、微かな痛みが走る。


(……俺の力って、一体……)


 迷いを断ち切るように、ロイは拳を握った。


「……それでも。仮面の徒がどんなに強くても……仲間を守るのは、俺の役目だ」


 短い言葉だが、確かな熱があった。


「……ロイさん」

 エリスが、慈しむように微笑む。


◆ ◆ ◆


 しかし――


「ロイ、守ってくれるのは嬉しいけど……まず四十肩、治さなきゃね?」


「おいぃぃぃ!! なんで今その話になるんだ!!」


 再び仲間たちの笑いとツッコミが弾け、

 結局この日も「仮面の徒の脅威」よりも

 「ロイの四十肩いじり」のほうが盛り上がるのだった。


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