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【第33話:リゼルの侵攻】

街の鐘が、不穏な低音を引きずりながら鳴り響いた。


「虚骸軍だ――ッ!!」


 冒険者の叫びがこだまし、黒い霧がじわじわと街を呑み込んでいく。建物の壁を這い、地面を染め上げる虚骸の瘴気。その中心に、漆黒の双剣を携えた虚骸将――リゼルが静かに姿を現した。


「……ここで終わらせる。人間の苦痛も、無力な足掻きも」


 冷ややかな声。しかし、その奥底で微かに震えが混じっていた。


◆ ◆ ◆


 ロイは剣を握り直し、仲間たちへと力強く振り返る。


「行くぞ、みんな……全員で迎え撃つ!」


 セレナが盾を掲げる。

「この街は、絶対に通さない!」


 フィオナは弦を引き絞り、心の中で悲鳴のように叫んだ。

(ロイの隣だけは……ぜったい渡さないんだからぁぁぁぁぁ!!)


 ミーナは冒険者たちを次々と指揮し、防衛網を瞬時に構築する。

「市民は避難を急いで!前衛は持ち場を死守!」


 ティナはいつものほわっとした笑顔のまま、虚骸兵を片手で粉砕していく。

「わぁ……かたいですけど……がんばりますね♪」


 リリアは雷の魔法陣を展開し、空気を震わせた。

「まとめて焼き払うわ!」


 ガイルは獣の力を解放し、雄叫びと共に突撃する。

「オレの牙、思い知れぇぇぇッ!」


 ルカは鳥へと姿を変え、空から敵陣を撹乱した。

「ロイ、下は任せて! 空から落とす!」


 エリスは祈りを込め、仲間たちの傷を次々と癒していく。

「大丈夫……わたしが支えるから!」


 そして神龍さまは、小さいままロイの肩で仁王立ち。

「ふははは! 余の威光、存分に見せつけてくれよう!」


◆ ◆ ◆


 戦場を見据えるリゼルは、仲間たちの奮戦を前に、ほんの一瞬だけ目を揺らした。


「……どうして、そこまで必死になれる……?」


 その問いに、ロイが一歩踏み出して応える。


「リゼル! お前が望んでるのは“痛みの終わり”なんだろ!?」


「黙れ! お前に私の何がわかる!!」


 叫びと共に虚骸兵が膨張し、瘴気が荒れ狂う。


 だがロイは退かなかった。

 四十肩を押さえながら、痛みに耐えて前に出る。


「痛みを知るから、人は優しくなれるんだよ! オレだってな……毎日肩が痛えんだよ!」


「はぁぁぁ!? ここで四十肩の話!?」

「ロイさん、そういうところ……すっごく好きです!」

「いやいやいや! ティナ、戦闘中!!」


 戦場の真ん中で、いつもの騒がしさが炸裂した。


◆ ◆ ◆


 だが――リゼルの双剣が放つ力は、その茶番すら吹き飛ばすほど苛烈だった。


「これが……絶望だ!」


 漆黒の斬撃が広場を切り裂こうとした、その瞬間。


 ロイの肩で光が弾けた。

 神龍さまが本来の巨大な姿へと戻り、空を震わせる咆哮を放つ。


「余と契約せし者よ――今こそ力を解き放て!」


 金色の龍のオーラがロイを包み、虚骸兵を掃討し、リゼルの双剣さえ受け止める。


「まだだ……まだ終わってねぇ!」


 火花を散らし、ロイとリゼルの刃がぶつかり合った。


◆ ◆ ◆


 激突の末、わずかにリゼルが後退する。


「……お前の痛み……確かに届いた。だが私は、止まれない」


 その言葉を残し、虚骸の霧と共にリゼルは消え去った。


 静寂の後、街に歓声が湧き上がる。


「ロイ!ロイ!ロイ!」


「ちょっ……やめろって! 肩が痛いから胴上げはマジでやめろォォォ!!」


 ロイの悲鳴が、今日も街に響き渡った。


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