【第24話:鳥とおじさん】
クルヴァは顔面を押さえながら、なおも不気味な笑みを崩さなかった。
「……フフフ。邪魔者も入った。――今日はここまでとしよう」
空間に走ったひび割れが彼の身体を裂け目の奥へ吸い込み、音もなく消滅する。
残されたのは崩れた家々、倒れた石畳、そして安堵と混乱の入り混じった人々の息遣いだけだった。
そのとき――
「隣町のラーナが襲撃を受けているとの報せです!」
駆け込んできた兵が叫ぶと、場の空気が一変した。
ロイは仲間と街の様子を見渡し、深く息を吸う。
「……ここはまず防衛と復旧が優先だ。偵察なら、俺が行く」
「ひ、ひとりで!?」「危険すぎます!」
不安の声が飛ぶが、ロイは肩を押さえつつ苦笑するだけだった。
「四十肩の散歩だと思ってくれ。……すぐ戻る」
拒む暇を与えず、ロイは夜の街を後にした。
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◆森の中での出会い
月明かりが木々の間からこぼれ落ち、森は不気味に静まり返っている。
そんな中、助けを求めるような鋭い鳴き声が響く。
「……ん? なんだ、あれ」
枝の上で、大きな猛禽が罠にかかってもがいていた。
羽は乱れ、縄が深く食い込んでいる。
「おいおい、こんな危ねぇところで……よし、待ってろ」
ロイは腕を伸ばす――が。
「ぐおぉっ……! いってぇぇぇ……ッ!」
四十肩が悲鳴を上げる。
何度も肩を回し、呻きながら罠を外し、ようやく鳥は自由になった。
だが次の瞬間、鳥は淡い光に包まれ、人型の影へと形を変える。
現れたのは、黒髪の艶やかな少女。
鋭い瞳を向け、冷たく言い放つ。
「……助けられるなんて、屈辱」
「……へ?」
ロイは口を開けたまま固まる。
「私は“ルカ”。空を駆ける種族よ。……よりによって、おじさんの手を借りるなんて最悪」
「おじ……っ!? そ、そんなにハッキリ……ぐふっ!」
ロイは胸を押さえて崩れ落ちた。
「な、なによその倒れ方……」
「精神に効くんだよ……“おじさん”は……」
「知らないわよ!」
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◆険悪(?)な道中
ルカはなぜか距離を保ちながらもロイについてくる。
「ちょっと、もっと速く歩けないの? おじさん」
「おぉ……足が攣ってるだけだ……無理すると肩に響く……」
「ほんとに頼りないわね」
毒舌は絶好調だが、声色の端にかすかな心配も混ざっていた。
そのとき、藪から野犬が飛び出す。
ロイは反射的にルカを背に庇う。
「危な――!」
痛む肩を押さえながら野犬を払いのけると、ルカは一瞬だけ息を呑んだ。
頬がわずかに赤く染まる。
「……べ、別に感謝なんてしないんだから」
「いや、俺はただの四十肩だからな……」
「その台詞、全然カッコよくない!」
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◆隣町・ラーナの影
森を抜けた瞬間、ロイたちは息を呑む。
遠くに見えるラーナの街が、赤い炎に照らされ、不気味な影を揺らしていた。
「……間に合わなかった、か」
ロイは唇を噛む。
そんな彼に、ルカがふっと視線を向ける。
「空から様子を見てくるわ。おじさんは……絶対、無茶しないで」
「いやだから、その“おじさん”やめ――」
ルカは鳥の姿に戻り、ひときわ高い鳴き声とともに夜空へ舞い上がった。
取り残されたロイの叫びが森に響く。
「おじさん言うなぁぁぁああ!!」
夜風にその声は空しく吸い込まれていった。
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