【第21話:朝のスイート部屋は戦場だった】
翌朝――。
ロイは目をこすりながら、豪華なスイート部屋のベッドから上半身を起こした。
「……ん? なんか重いぞ?」
気づけば両腕に セレナとティナがそれぞれ抱きついて寝ている。
しかもティナは「ロイ……すき……」と寝言。
「ちょっ……おい、これはまずいだろ!」
慌てて抜け出そうとするが、今度はフィオナが布団の端から飛び起き、
「な、なにやってるんですか二人とも!? 朝からイチャイチャ禁止です!」
と顔を真っ赤にして突撃。
さらにバスッとドアが開き、リリアが控えめに入ってきた。
「あ、あの……みなさん、そんなにロイに近づくと……」
「リリアまで参戦するのか!?」とロイは頭を抱える。
部屋の空気、即フリーズ。
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セレナは素早く体を起こし、咳払い。
「これは違うの! ティナが勝手に抱きついてきただけ!」
ティナは「ロイが嫌がってなかったからオッケー!」と無邪気に返す。
フィオナは内心大パニック。
(ちょ、ちょっと!? この修羅場に私もいるってだけで不利じゃん!? どうする私!? ここで一手打たないと!!)
そして、フィオナはなぜかロイの寝癖を直すためにぐいっと顔を近づけてしまう。
「わ、私だってロイのお世話くらい……」
「うぉっ!? おい近い!」
その瞬間、セレナとティナとリリアの三方向から、ものすごい殺気が放たれる。
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ドアが勢いよく開いた。
「おっちゃん! 朝飯食おうぜ!」
ガイルが飛び込んできて、場の空気に固まる。
その間にも、三人娘+リリアはバチバチ火花を散らしていた。
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結局――。
朝食会場へ行くまでにロイは 引っ張られ、抱きつかれ、膝枕にされ、背中を押され、完全にボロボロに。
「……俺はただ、普通に朝飯が食いたいだけなのに……」
そのぼやきを聞いたガイルが豪快に笑った。
「おっちゃん、完全にハーレムの主役だな!」
「そんなポジションいらねえ!」
宿のスタッフがくすくす笑いながら見ている。
「スイートに泊まった英雄様は、やっぱり大人気ですなぁ」
ロイは頭を抱えた。
「……人気ってのは、こういう意味じゃねえんだよ……」
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――その頃。
温泉街の裏路地で、マーヴォが屋根の上から一部始終を眺めていた。
彼はにたりと笑う。
「クク……羨ましいねえ。愛される英雄様か。
でも、その“人気”が裏返る瞬間――それを見たら、どんな顔をするんだろうね?」
そう言って、カードのような刃を指で弄ぶ。
朝の平和な喧騒とは裏腹に、不気味な気配が確実に近づいていた――。




