【第20話:恋と温泉と料理対決!そして忍び寄る影】
討伐依頼の帰り道。全身が重い。足が棒だ。もう心まで湯気が出そう。
そんな状態のロイ一行に、希望の光が差し込んだのは――
「ねえロイ、あれ……温泉街よ!!」
セレナが指を差した先。
湯煙の立ち上る美しい街並み。浴衣の客。香る湯の匂い。
(……! 温泉! 天からの救いか!? 頼む、今日だけは平穏を……!)
だがロイの淡い期待は即座に打ち砕かれる。
「温泉! やっと身体を休められる!」
セレナは全力の笑顔でジャンプ。
(いや……お前がジャンプすると、その、色々揺れて心が休まらんのだが……)
そしてフィオナが、顔を真っ赤にしつつ内心で大騒ぎする。
(やばい! 温泉、イベントじゃん! 混浴? いやでも混浴は早すぎる?
でもワンチャン……! いやいや死ぬ!! 私のメンタルが死ぬ!!)
(頼むから混浴だけはやめてくれ……命の危険がある)
ティナは純真無垢で叫ぶ。
「ロイと一緒にお風呂! わーい!」
「いや入らん! 絶対に別で入る! 俺は戦う前から敗北が決まった構図は嫌だ!!」
(ほんとにやめて……俺の理性にHPバーがあるなら残り3しかないから……)
そんなところへリリアとガイルも合流した。
リリアはもじもじしながら、息を整えるように言った。
「温泉……初めてだから、ちょっと緊張します。でも楽しみ、です……」
(くっ……可愛いじゃないか……! 守りたくなる系のやつ!!)
ガイルは湯気より熱いテンションで吠える。
「うおおおお! 肉焼いて温泉入って肉食って寝る!! 最高のローテじゃねえか!!」
(そのローテ、胃袋死なない? いやこの男なら大丈夫だな……)
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■ 温泉宿と「料理対決イベント」爆誕
宿に着くと、仲居さんがこう説明してきた。
「本日は特別企画として、夕食は“料理対決形式”になっております!
厨房をお使いいただき、腕前を競っていただけますよ。優勝者には――
《豪華温泉スイート一泊券》をご用意しております!」
その瞬間、三人娘の目がギラッと光る。
セレナ「ロイのために勝つ!」
(頼む、巻き込むな……俺は普通の部屋で静かに寝たい……!)
フィオナ(料理勝負!? 女子力アピール最大チャンス!! ここで私の家庭的魅力を!!)
(いやフィオナは料理……少し危険なんじゃ……?)
ティナ「ロイに食べてもらうんだもん!」
(もう結果が怖い。味はいいのに調理中に爆発するアレがまた起きる未来が見える)
さらに――
「わ、私も……挑戦してみてもいいですか?」
リリアもそっと手を上げた。
(あーかわいい。控えめなのに芯がある感じ、最高に良い)
ガイルは肉塊を抱えたまま叫んだ。
「肉!! 肉だけで勝つ!!!」
(お前の料理、料理っていうか“焼いた肉”一本なんよ)
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■ 料理対決、地獄の幕開け
厨房に立つ五人。
審査員たちが見守る中、戦いは始まった。
● セレナ
完璧な段取り、優雅な手さばき、美しい盛り付け。
(こいつ……王族令嬢として料理修行してたんじゃ……?)
● フィオナ
慣れない手つき。
だが心を込め、ひたむきに野菜を切る姿は健気だった。
(あっやばい……ちょっと焦げてる……でもフィオナが必死で作ってるから逆に刺さる……!)
● ティナ
調味料ドバァ!!
鍋ボンッ!!
煙モクモク!!
(爆発したァァァァ!!!
あ、でも味はめちゃくちゃうまい……なんで!?)
● リリア
じっと野菜を見つめて、丁寧に下ごしらえ。
シンプルなのに素材が生きて、驚くほど美味い。
(こ、これが……素材の声を聴く料理……!?)
● ガイル
肉。
焼く。
以上。
「うおおおおお!! ミートォォォ!!」
(観客大歓声なのなんで!?)
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■ 結果:引き分け(地獄)
「審査の結果――
全員、素晴らしく個性的でしたので……引き分けといたします!
スイートは、皆さまで仲良くお泊まりください!」
「「「「「えっっっっ!!?」」」」」
(いやだあああああ!!
スイートに女子全員+ガイルって人数的にも精神的にも無理!!
俺の心のHPバーが0どころかマイナス突入!!)
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■ 夜の温泉、修羅場の湯気
女子浴場。
セレナ「ロイは本当に頼れるようになってきたわ」
フィオナ(また彼女っぽい発言!!)
ティナ「ロイはわたしのお嫁さんだから!」
湯気の中、三人の火花が散る。
(頼む……温泉なのに俺の寿命が縮む未来しか見えない……)
一方男子浴場では――
ガイルがロイの背中をバンバン叩く。
「おっちゃん! なんでそんなモテるんだよ!!」
「……俺が一番聞きたい」
(俺はただ……普通に生きたいだけなんだ……)
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■ そして、湯煙の外で――
その喧騒とは別に、温泉街の片隅。
細身で派手な衣装を着た奇妙な男が、月明かりを浴びながらほくそ笑んでいた。
目つきはねっとりと湿り、舌をぺろりと舐める。
「クク……愉快だねぇ。英雄顔したおじさんと、懐いてくる女の子たち。
ゼイヴ様の理想のため……もうちょいと“遊んで”あげようじゃないか」
――仮面の徒ゼイヴの部下、“マーヴォ”。
不穏な影は、すでにロイたちの足元で揺れ始めていた。
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