【第18話:“なぜか”再燃するロイ人気】
洞窟から街に戻った俺たち。
ギルドの扉を開けた瞬間――
「来たぞ!」
「帰ってきた!」
「洞窟攻略したパーティー!」
なぜか大歓声で迎えられた。
(え、なんで!? 俺たちそんな偉業したっけ!? いやしたけど、ほぼティナだし!)
「おい聞いたか?」
「初心者殺しって言われる洞窟をクリアしたんだとよ!」
「しかも新しい仲間連れて帰ってきたって噂だぞ!」
俺は慌てて両手を振る。
「いやいや、あの……攻略というよりは……ほとんどティナが……」
「ロイおじさん最強ーー!!」
「ギルドのハーレムマスター帰還!!」
「ハーレムって言うなああああ!」
すでにギルド全体の“ロイ像”は想像で巨大化していた。
(頼む……俺の実力を勝手に盛るのはやめて……肩が痛むから……)
⸻
受付のミーナがティナを見ると、にこりと優しく微笑んだ。
「あなたが新しい子ね? 冒険者登録、する?」
「うんっ!」
ティナは迷いもなく元気いっぱい返事をする。
そして、さらっと爆弾を落とした。
「私、ロイの隣が好きなの。だからロイのパーティーに入りたい!」
「「……はあああぁぁ!?」」
ギルド全体が揺れた。
「またロイさんの女の子が増えたぞ……!」
「どんどん来るな……これが“おじさんフェロモン”か……!」
(いや、そんなもの出してないから! 出てるのは湿布の匂いだけだ!!)
セレナはぎゅっと拳を握り、横顔をわずかに赤らめていた。
「ティナ、その……簡単にそういうこと言うのは……」
しかしそれ以上言葉を続けられない。
対照的に、フィオナは心の声が大渋滞していた。
(ちょ、ちょっと!? “ロイの隣が好き”って何その直球!? 私は毎晩ちょっとだけロイの寝姿見て胸がぎゅっとしてるのに!! 攻め方が無邪気で強い! 天敵出現!!)
(……いや、寝姿を毎晩って何してんだフィオナ!?)ロイはフィオナの表情から読み取ってツッコむ。
⸻
さらにティナはギルドホールの真ん中で、なぜか胸を張った。
「みんな聞いて! ロイってすごいんだよ!」
「うわやめろティナ本当にやめろ……!」
「岩をバーンって壊して、魔物をまとめてババーンって倒して――」
「いや全部事故っ……事故だから!!」
だがギルドの反応は違った。
「岩を砕くほどの四十肩……!」
「それもう秘奥義じゃん!」
「頼れるおじさんバンザイ!!」
(いや、だから、俺はただの四十肩で……!)
気がつけば周囲が「ロイ!ロイ!」とコールを始めていた。
俺はついに膝をつく。
「なんで……どうしてこうなるんだ……俺はただ静かに暮らしたいだけなのに……!」
⸻
その夜。宿に戻った俺たち。
当然のようにティナは俺の隣にぴょこんと座った。
「ねえロイ、今日も隣でいい?」
「お、おう……」
(近い。近い。距離感ゼロ。肩に触れる。痛い。でも悪くない……いやダメだ落ち着け俺!!)
セレナはその様子を見て、ぎゅっと唇を噛んだ。
何か言いたそうなのに、視線をそらすだけ。
一方、フィオナはもう心の声が崩壊している。
(な……なにこの密着!? ティナちゃん完全にロイの隣のポジション奪う気じゃん!? 私だって……私だって本当は隣に……ああもうどうすればいいの~~~!!)
ガイルだけが空気を読まず、自分の皿の肉をむしゃむしゃ食べながら笑っていた。
「いやあ~おじさんマジすげえ! モッテモテ!」
俺は絶叫する。
「だから俺は!! モテたくてやってるんじゃなーーい!!」
宿が震えた。
⸻
こうして、ティナが正式に仲間入りした。
街では「ロイ=人気おじさん冒険者」という不可解なイメージが完全に定着。
本人の意思とは真逆に、人気は燃え盛る一方だった。
――だが、盛り上がる街の裏で。
ゼイヴ一派の暗い影が、静かに新たな動きを始めていた。
このときの俺たちはまだ、それを知らない。
⸻




