表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/327

【第17話:ドキドキ洞窟と天然パワー少女】

「よーし、今日は修行デーだ! 一気に強くなるぞ、肩も俺も!」


 気合いMAXで洞窟の前に立つ俺――ロイ。

 全員、先日の戦いで力不足を痛感したため、レベルアップ目的でこの洞窟へやってきた。


(……まあ俺は肩のレベルを先に上げたいがな)


 しかしセレナは眉を寄せ、剣の柄をきゅっと握った。


「……本当にここでいいの? この洞窟、“初心者殺し”って呼ばれてるのよ」


「なんだその絶望ワード!? 初心者に優しくしてくれよ!」


 思わず一歩下がる俺。肩がズキッと悲鳴をあげる。


(おい肩、後退で痛むな。前後左右に敏感すぎだろ)


 フィオナはそんな俺を横目に、頬を赤らめながら心の声を炸裂させる。


(ほら……また腰引けてる……。でもそういう弱そうなところが……可愛い……! って何考えてるのよ私!!)


 おい聞こえてるぞ。いや聞こえてないけど、なんか見ればわかる。



 洞窟前で準備していると、ふいにセレナがちらりと俺を見る。


「……ねえ、ロイ」


「ん? どした?」


「もし……私が危ない時があったら……その、守ってくれる?」


 その一言が胸に突き刺さる。

 真剣で、柔らかくて、どこか不安げで――本当に守ってほしいという願いが乗っていた。


(ま、守るに決まってるだろ……! いや俺弱いけど……! 肩痛いけど……!)


 慌てて頷くと、セレナの頬がほんのりピンクに染まった。


 その様子に、フィオナが心の中で叫ぶ。


(は、はぁ!? ちょっと待ってセレナ!! なにその“乙女ムーブ”!? ずるい!!

 私なんて毎晩こっそりロイの背中見てドキドキしてるのに!! 先に仕掛けるなんて反則でしょ!!)


 いや背中見るな。怖いから。



 洞窟の中はひんやりして、スライムやコウモリがうじゃうじゃ現れた。


「来るわよ!」

 セレナが斬り払い、

「はぁっ!」

 リリアが風魔法で吹き飛ばし、

「うおおおおお!」

 ガイルが突進して、

「逃さないわよ!」

 フィオナが矢で仕留める。


 俺は――肩をぐるぐる回し、痛みに耐えつつ気合を注入!


「ショォォルダー・インパァァクトッ!!」


 ……しかし空振り。

 岩に直撃。洞窟が揺れる。


「ちょっと!! 洞窟崩す気!?」

「おじさん! 方向音痴すぎでしょ!」

「天井落ちてきたらどうすんの!」


 仲間全員から怒号。

 すみませんマジでごめん。肩のクセが強いんだ。



 ドサドサと崩れた岩の下から、もぞもぞと何かが動き――


「んー……ふわぁ。よく寝たぁ……」


 白い髪の少女が、欠伸しながら岩を片手で持ち上げて立ち上がった。


「ちょ――それ何トン!? 人の腕力じゃないわよ!!」

 セレナが絶叫。


 少女はぽかんとして言う。


「え? 重いのこれ?」


 次の瞬間、彼女は岩をポンと投げた。

 岩は奥へゴロゴロ転がり――


 ズドオォォォォンッ!!

 奥にいた魔物がまとめて倒れた。


(……え、何? 今の投げ? モン○ター上位武器?)


「す、すげぇ……」

 俺は思わず呟く。


 少女は笑顔で自己紹介した。


「えへへ、私ティナ。ずっとこの洞窟で寝てたの。あなたたち、楽しそうだからついていってもいい?」


 元気で、天真爛漫で、そして破壊的に強い。

 ティナは歩けば魔物が逃げ、笑えば地鳴りし、あくびすれば天井が揺れた。


 そして――なぜか俺をじっと見てくる。


「ロイっていうんだよね?」


「そ、そうだけど……」


「なんかね、ロイがいるとぽかぽかするの。……ね、隣にいていい?」


 セレナとフィオナが同時に固まる。


「なっ……!?」

「なっ……!?」


 俺は肩を押さえながら慌てふためく。


「ま、待て待て!! 俺はただの四十肩のおじさんだぞ!?」


 しかしティナは目を細めて言った。


「だから好きなんだよ? ロイみたいな人、安心する」


(なんで!? どこに安心要素が!? 肩痛いだけだぞ俺!?)



 こうして洞窟は――ほぼティナ一人の活躍で――制覇された。


 帰り道。


 セレナは唇を噛みしめ、

 フィオナは心の声を抑えきれない。


(まさか……こんな天然怪力少女がライバルになるなんて……!

 ど、どうするのよ私!? アピールってどうやればいいの!? 肩揉む? 違う!?)


(なんだこの異世界……! 肩に何を期待されてるんだ俺!!)


 洞窟の暗闇より濃い“恋と混乱の渦”が、パーティ内に静かに広がっていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ