【第17話:ドキドキ洞窟と天然パワー少女】
「よーし、今日は修行デーだ! 一気に強くなるぞ、肩も俺も!」
気合いMAXで洞窟の前に立つ俺――ロイ。
全員、先日の戦いで力不足を痛感したため、レベルアップ目的でこの洞窟へやってきた。
(……まあ俺は肩のレベルを先に上げたいがな)
しかしセレナは眉を寄せ、剣の柄をきゅっと握った。
「……本当にここでいいの? この洞窟、“初心者殺し”って呼ばれてるのよ」
「なんだその絶望ワード!? 初心者に優しくしてくれよ!」
思わず一歩下がる俺。肩がズキッと悲鳴をあげる。
(おい肩、後退で痛むな。前後左右に敏感すぎだろ)
フィオナはそんな俺を横目に、頬を赤らめながら心の声を炸裂させる。
(ほら……また腰引けてる……。でもそういう弱そうなところが……可愛い……! って何考えてるのよ私!!)
おい聞こえてるぞ。いや聞こえてないけど、なんか見ればわかる。
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洞窟前で準備していると、ふいにセレナがちらりと俺を見る。
「……ねえ、ロイ」
「ん? どした?」
「もし……私が危ない時があったら……その、守ってくれる?」
その一言が胸に突き刺さる。
真剣で、柔らかくて、どこか不安げで――本当に守ってほしいという願いが乗っていた。
(ま、守るに決まってるだろ……! いや俺弱いけど……! 肩痛いけど……!)
慌てて頷くと、セレナの頬がほんのりピンクに染まった。
その様子に、フィオナが心の中で叫ぶ。
(は、はぁ!? ちょっと待ってセレナ!! なにその“乙女ムーブ”!? ずるい!!
私なんて毎晩こっそりロイの背中見てドキドキしてるのに!! 先に仕掛けるなんて反則でしょ!!)
いや背中見るな。怖いから。
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洞窟の中はひんやりして、スライムやコウモリがうじゃうじゃ現れた。
「来るわよ!」
セレナが斬り払い、
「はぁっ!」
リリアが風魔法で吹き飛ばし、
「うおおおおお!」
ガイルが突進して、
「逃さないわよ!」
フィオナが矢で仕留める。
俺は――肩をぐるぐる回し、痛みに耐えつつ気合を注入!
「ショォォルダー・インパァァクトッ!!」
……しかし空振り。
岩に直撃。洞窟が揺れる。
「ちょっと!! 洞窟崩す気!?」
「おじさん! 方向音痴すぎでしょ!」
「天井落ちてきたらどうすんの!」
仲間全員から怒号。
すみませんマジでごめん。肩のクセが強いんだ。
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ドサドサと崩れた岩の下から、もぞもぞと何かが動き――
「んー……ふわぁ。よく寝たぁ……」
白い髪の少女が、欠伸しながら岩を片手で持ち上げて立ち上がった。
「ちょ――それ何トン!? 人の腕力じゃないわよ!!」
セレナが絶叫。
少女はぽかんとして言う。
「え? 重いのこれ?」
次の瞬間、彼女は岩をポンと投げた。
岩は奥へゴロゴロ転がり――
ズドオォォォォンッ!!
奥にいた魔物がまとめて倒れた。
(……え、何? 今の投げ? モン○ター上位武器?)
「す、すげぇ……」
俺は思わず呟く。
少女は笑顔で自己紹介した。
「えへへ、私ティナ。ずっとこの洞窟で寝てたの。あなたたち、楽しそうだからついていってもいい?」
元気で、天真爛漫で、そして破壊的に強い。
ティナは歩けば魔物が逃げ、笑えば地鳴りし、あくびすれば天井が揺れた。
そして――なぜか俺をじっと見てくる。
「ロイっていうんだよね?」
「そ、そうだけど……」
「なんかね、ロイがいるとぽかぽかするの。……ね、隣にいていい?」
セレナとフィオナが同時に固まる。
「なっ……!?」
「なっ……!?」
俺は肩を押さえながら慌てふためく。
「ま、待て待て!! 俺はただの四十肩のおじさんだぞ!?」
しかしティナは目を細めて言った。
「だから好きなんだよ? ロイみたいな人、安心する」
(なんで!? どこに安心要素が!? 肩痛いだけだぞ俺!?)
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こうして洞窟は――ほぼティナ一人の活躍で――制覇された。
帰り道。
セレナは唇を噛みしめ、
フィオナは心の声を抑えきれない。
(まさか……こんな天然怪力少女がライバルになるなんて……!
ど、どうするのよ私!? アピールってどうやればいいの!? 肩揉む? 違う!?)
(なんだこの異世界……! 肩に何を期待されてるんだ俺!!)
洞窟の暗闇より濃い“恋と混乱の渦”が、パーティ内に静かに広がっていくのだった。
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