表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/327

【第15話:おじさん人気騒動】

 街へ戻り、ようやく肩の痛みも――いや、痛みは普通に残ってるが――気持ちだけでも落ち着いた俺たちは、いつものギルドで一息つこうと扉を開けた。


 すると、次の瞬間。


「きゃああーーーっ! ロイさんだっ!!」

「ほんもの!? ほんものの四十肩スラッシュの人!?」

「肩からビーム出して魔獣を倒したって聞いたよ!!」


 ……なんだその伝説の上乗せ。誰だ盛ったやつ。


 ギルド内にいた冒険者や街の住人たちが、雪崩のように押し寄せてくる。

 挙句の果てには子どもまで俺の足に抱きついて離れない。


「ちょ、ちょっと! 俺はただの四十肩のおじさんで――」

「あれで“ただのおじさん”なら、うちの父さんは虫以下ですよ!」

 受付嬢ミーナまできらきらした目で言い出す。


(いや比較対象が失礼すぎないかあなたの家の男性陣に……?)


 とにかく俺の必死の否定は、一切届かないのであった。



 その後も街を歩けば、どこへ行っても肩・肩・肩。


「この間の戦い、見てました! 肩を押さえながら立ち向かう姿……胸が熱くなりました!」

 通りがかった女性の目がうるんでいて、こっちが困惑する。


「ロイ殿! ぜひうちの店の看板になってくれ!」

 肉屋の主人まで乗り気だ。


 いや俺の顔で肉売っても売上が下がる未来しか見えないんだが。


「サインください! ここに! 肩に!!」

 子どもが自分の肩を差し出してくる。


(なんで肩限定なんだ……肩教でもできてるのか……?)



 仲間の反応も、まあ案の定というべきか。


 セレナは腕を組んで言う。

「英雄というものは、望まずとも人気がつきまとうものだ。誇れ、ロイ」


(いや俺の肩を誇るんじゃなくて、なんで戦果より肩の話題なんだ)


 リリアはくすっと笑って肩をすくめる。

「“おじさん人気”って、ちょっと新しいジャンルね」


(そんなジャンル、開拓した覚えはない)


 フィオナは真剣な顔で言った。

「……私も肩を鍛えれば強くなれるのかしら」


(いや違う、鍛えたら四十肩にならないの。そこ誤解しないで)


 そして極めつけはガイル。

 目を輝かせ、拳を握りしめて叫ぶ。


「ロイは俺の憧れだ!! 肩をさすりながら戦うなんて……男のロマンだ!!」


(頼む。そのロマン、今すぐ捨ててくれ)



 夜、宿に戻った俺はベッドに倒れ込み、天井をぼんやり見上げた。

 肩は、まあ……普通に痛い。

 しかし不思議と――胸の奥があたたかい。


 誰かに認められるなんて、前の人生では縁がなかった。

 だからこそ、こうして感謝されるのは……ちょっと、悪くない。


(……まあ、人気が続いたら続いたでめんどくさいんだが)


 そんなことをぼそっと考えていると、外から子どもたちの元気な声が響いた。


「ロイさーーーん!! 明日も肩でお願いしますーー!!」


(いや明日は肩休ませていいだろ!?)


 どうやら俺の異世界生活は――

 英雄譚ではなく、肩物語として進行しつつあるらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ