【第12話:四十肩スイング、爆誕】
宴の余韻を抱えたまま、俺たちは夜風に当たろうと街の広場へと歩いていた。
酔いがほんのり残っているせいか、石畳を踏む足取りも軽い。
――その瞬間だった。
ズゥゥンッ!!
大地が揺れ、足元の石がビリビリ震えた。
「えっ……地震? いや、この世界にあんのか地震……?」
と、思った矢先。
闇を裂く咆哮。
建物の陰から、巨躯が姿を現した。
牛の頭に、蛇の胴。
背中には骨のような棘がびっしりと並び、恨みでも抱えてるのかってくらい禍々しいオーラを放っている。
「ひっ……ひぃぃ! なんで街中にあんなの出るの!?」
リリアが完全に涙目。
「市民を避難させろ!」
セレナが即座に指示を飛ばし、剣を構える。
「こりゃあ、ひと仕事だな!」
ガイルは血が騒いで仕方がないらしい。
「わたくしが注意を引きますわ!」
フィオナが弓を構える、その動きはやたら華麗だ。
みんなが戦闘態勢に入る中、俺も腰の短剣に手を伸ばした。
(……よし、俺も戦うぞ。宴の勢いも手伝って、今日はやれる気がする)
だが。
「ぐぅあっ……ッ!」
肩。あの魔の痛み。
夜だろうが宴だろうが関係なく襲ってくる、忌まわしき四十肩。
「おじさま、危険です! 後ろに!」
フィオナの声が飛んでくる。
けど――。
(ここで下がるわけには……いかねぇんだよ。みんな戦ってんだぞ……!)
巨獣が大木のような腕を振り下ろす。
地面が砕け、石が飛び散る。
俺は身をひねって避けた。
――肩がバキッと鳴った。
「いだだだだだ!!? ちょ、嘘だろ今!? 外れた!? なんか変な音したって今!!」
もう泣きそうになりながら、俺は短剣を振りかぶる。
いや、振りかぶったつもりだった。
次の瞬間――。
ズバァァァァァンッッ!!!
斬撃、というより衝撃波。
月明かりが一瞬陰るほどの勢いで、弧を描く斬圧が走った。
魔獣の腕が、すぱぁん、と吹き飛んだ。
「……え?」
「……へ?」
「……は?」
リリア、セレナ、ガイルの三人が、同じ顔で固まる。
「四十肩……の暴発……?」
セレナでさえ困惑している。
「おじさん、やべぇ!! なんかの奥義出た!!」
ガイルがはしゃぐ。
「す、すごいですわおじさま! もはや痛みすらエネルギーに転化してますの!?」
フィオナが興奮気味に駆け寄る。
ミーナは半分引きながら呟いた。
「……、あの振り抜き……人間では、出せません」
(人間離れ? いやただ痛かっただけなんだけど……?)
俺は震える腕を見下ろした。
身体がガタガタ震えてる。痛いから。
でも、なんか強い気もする。痛いけど。
「まさか……四十肩って……武器になる……?」
言ってて自分が一番驚いてた。
だが、仲間たちはもっと盛り上がっている。
「おじさま! その技、名前をつけるべきですわ!」
「……肩の痛みを力に変える……恐るべき技」
「いい名前が浮かんだよ! 四十肩スイングとかどう!? 絶対ウケる!」
そして――。
『四十肩スイング』
こうして俺に、涙無しでは語れない新必殺技が爆誕した。
(いや嬉しくねぇ……肩こわれるわ……)
そんなツッコミは夜に溶け、広場にはまだ魔獣の断末魔が響いていた。
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