第六話 四大怪異
大蜘蛛の怪異との戦闘も終わり、のんびり街へ戻ろうとしたのだが。
なんかよく分からないけど迷うことになってしまった。
そのせいで街に戻れたのは日が暮れてからだった。
少しの申し訳無さと街の混乱への恐怖の気持ちを持って戻ったのだが、意外にも街はそこまで混乱に包まれているわけではなかった。
勿論、多少の混乱はあったが。
どうやら、人撫と事情を少し知っているイルが頑張ってくれたらしい。
いや〜感謝だな〜なんて思っていたら、人撫に怒られてしまった。
『お前も後処理やらなんやら手伝えや。どうせ瞬殺やったんやろ?』
・・・仕方ない『あ?』じゃなかった、俺もサボったままじゃ流石に二人に申し訳ないので、後処理を手伝うことにする。
とは言っても、俺がする事はそこまでしんどい事じゃない。
【Death Merchants】の本部に連絡を入れて、街の人間の保護を要請するだけだ。
ん?どうやって連絡するか?
それは俺の耳飾りでだよ。
この耳飾り、実は通信機能があって、同じ耳飾りをつけている人間と話すことが出来る【Death Merchants】に所属する人間は皆つけている超便利なアイテムだ。
右の耳飾りが送信用で左の耳飾りが受信用だ。
右には相手の耳飾りの数字を刻めて、左には自分の耳飾りの数字が刻まれている。
因みに、右の耳飾りに刻むことの出来る数字は六個までで、そのうち一つは【Death Merchants】の本部で働く事務職員の数字だ。
つまり、自由に刻むことの出来る数字は五個ってことになる。
操作方法も簡単で、送信の時は刻まれている数字に指を当てればその数字の耳飾りの持ち主と通信することが出来る。受信の時は光っている自分用の数字を指に当てれば良い。
あと、受信側は誰からの通信なのかを左の耳飾りに浮かび上がっている数字から分かる。
だから俺は今、右の耳飾りに刻まれている事務職員用の数字に指を当てて、今回の騒ぎの経緯と街の人間の要請を申請すればいい。
〜通信中〜
よし!申請完了。あと1時間もすれば保護部隊が到着するそうだ。
いや〜流石【Death Merchants】の本部職員、優秀だね。
その後、なんやかんやあって本部がある都市に戻った俺と人撫は、イルや他の街の人達と別れて、宿に戻った。
イル達は一度本部で保護され、その後別の都市で暮らすよう手配されるらしい。
うん!一件落着だ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その後。
宿に戻った俺は実験の結果について紙にまとめていた。
ん?なんの実験か?
勿論毒についての実験だ。
俺の目標は【原初の毒】を超える毒を創り出すこと。
【狂毒】も【原初の毒】を超えるつもりで創った。
まぁ、超えられなかったんだけど。
とはいえ、今の俺に【原初の毒】を除いて【狂毒】を超える毒を創り出すことは不可能だ。そう言い切れるほどに【狂毒】は完成されている毒だという自信がある。
でも、【原初の毒】は超えられなかった。
何かが足りない、でもその何かが分からない。
だから俺は実験をすることにした。
その内容は、【狂毒】の基礎の物質を変えて毒を作り、どの物質が最も怪異に効果があるか?というものだ。
『で、結果はどうやったんや?今回はよう分からん草を基礎にしたんやろ?』
ん?あぁ、人撫か。今回は効果があまりなかったよ。
『そうか・・・ってもうこの世の全ての物質試し終えたんちゃう?』
そうだな。
『ほな、何が一番効果あったんや?』
怪異だね。それも上位の怪異の重要な部位。今のところ、炎馬の鬣が一番良かったよ。本当は核の部位で実験したかったんだけど・・・
『怪異は核の部位潰してもうたら塵になって消えるもんな』
そう。
でも、核の部位を潰しても消えない怪異もいるだろう?
『・・・四大怪異か』
ああ。あいつらの核は二つある。
一つはそいつらの体の中に、もう一つは【原初の毒】でも殺しきれなかった、【始まりの怪異】と共に封印されている。
だから毒の素材として扱うことが出来るんだ。
『なるほどな〜ってことは、まさか!?』
その〝まさか〟だよ、人撫。
もう実験は終わり。
これからの目標は四大怪異の核の入手だ。
正確に言うなら――――――
【骸龍】の瞳
【葬虎】の尾
【血雀】の羽根
【焉武】の甲羅
――――――だね。
『まじかいな、命がいくつ有っても足りへんで?それ』
だからこそ面白いんじゃないか。
『はぁ〜しゃあない!!!ワシも付き合うたる・・・ってナル!!!』
うん?
『耳飾り!!!左の耳飾り光ってんで』
あ、本当だ。
誰からだろう?事務職員さんか?
ええっと、この番号は確か・・・
『あれ、消えてもうたで?』
「・・・最悪だ」
『ん?誰からやったんや?』
「会長だよ」
『会長?』
「ああ。【Death Merchants】の会長・紅 鈴風だよ」
『あぁ〜あの妙にナルのこと気に入ってる人な!』
「そう。しかも10秒くらい光って消えただろ?」
『それがどないしたん?』
「それ、《ちょっと来いや》っていう暗号みたいなものなんだよ」
『な、なるほどな』
「俺、あいつ苦手なんだよね。性格が合わない」
『でも、行くしかないんやろ?』
「まぁね。はあ〜憂鬱だ」