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第十話 出会い

 〜2年前〜 前会長とナルの大乱闘の数時間前


 「だから、生け捕りだって言ってるじゃないですか!!!」


 「ならん!!!【Death Merchants】は怪異を殺す存在だ。それ以上の価値も、それ以下の価値も持ち合わせておらぬ。それを生け捕り?ふざけるのも大概にせよ」


 「っっっ!!!だから、怪異を殺す為の毒を作るのに怪異の素材が必要なんです。怪異を殺す為に、必要なことです」


 「ナル、お前は大きな勘違いをしている。我々のすべきことは怪異を殺す、それだけだ。それ以外の思考や行為は我々には必要のない欠陥品なのだ。故に怪異を必要としている時点で、お前の毒は欠陥品だ」


 「俺の毒が、怪異を多く殺すことに繋がっても、あなたの主張は変わらないと?」


 「あぁ、その通りだ。理解したならささっと出て行け」


 俺はその後、無理矢理建物の外につまみ出された。


 「くっそ〜、あの分からず屋糞爺が」


 今の【Death Merchants】会長・紅 秋水は怪異を強く憎む紅一族の体現者のような男だ。


 だから俺の理論上、【原初の毒】を超える可能性がある【狂毒】も、素材として怪異の素材が必要なたまに認められなかった。


 はぁ、今回の件でまた組織内でやりずらくなる。


 【Death Merchants】には二つの派閥が存在する。


 一つは、紅家や四家に属する者達の派閥

 もう一つは俺や煙のような一般家庭出身の者達の派閥


 大体割合で言えば、前者が7割で後者が3割だ。


 前者の派閥は安定して強い者達が多いのが特徴。

 後者の派閥は突出した化物が四人いるのが特徴。


 ここまでは別にいい。


 ただ、問題なのがその数人の突出した化物が皆自由過ぎることだ。


 めちゃくちゃ万能だけど全く仕事しない、【魅宴】の煙

 超毒オタクでマッドサイエンティストな、【盗毒】のサラ

 クソ強いけど基本的に人の話を聞かない、【傘隠】のシン

 気に入らない奴は全員呪いで沈黙させる、【呪箱】の影


 ※現在はこの四人にナルも加えられている。

 普段は無害だけど地雷を踏むと最も怖い、【狂毒】のナル


 

 こいつら四人の化物が好き勝手するせいで、俺達一般家庭出身者は紅家や四家派の人間から物凄く嫌われている。


 更に問題なのが、こいつらと俺が友達だということだ。

 こいつらと仲良いせいで、俺の評判滅茶苦茶悪いんだよな〜


 あはははあははははは。


 今日の件でまた悪くなるんだろうな〜

 会長と揉めた奴って。


 それもこれも全部好き勝手してるあいつらのせいだ。

 俺は絶対ああはならない!!!


 って文句ばっかり言っても現状は変わらない。

 下ばかり向いてないでそろそろ前・・・ん?狐?それも血だらけ?


 下向いてたら凄いの見ちゃったんだけど・・・取り敢えず家持って帰るか。

 狐なんて治療したことないけど。




 〜治療中〜




 『助かったで!!!!!!!!!』


 この狐・・・怪異だ。頭に声が直接響く。


 『そう、ワシは怪異の人撫。ジンちゃんって呼んでな!!!!!!』


 人撫か、聞いたことのない怪異だ。

 というか、なんで血だらけで倒れてたんだ?


 『え!?もっとないんか?』


 ん?なにが?


 『いや、考えてること分かんの怖っ!!!とか』


 楽でいいね!!!


 『じゃ、じゃあ怪異殺さな!!!とかは?』


 う〜ん、別に怪異にそこまで恨みはないからな。


 『嘘やろ・・・』


 で、なんで血だらけで倒れてたんだ?

 お前の傷、どう考えても人間にやられたものだった。


 『・・・っ。ちょっと長くなるけど、良いか?』


 問題ない。


 『じゃあ、話すで』


 それから人撫が話した内容は、想像以上に酷いものだった。


 まず人撫の怪異としての能力は、疑似死者蘇生のようなものだった。

 死者の想いを喰らって、その死者の姿に化けるらしい。


 しかし、死者の姿に化けている間は死者に体を乗っ取られていて、人撫に意識はないらしい。


 ある日、人撫はある若い夫婦の死んでしまった子供の思いを喰らった。

 その後、人撫の体を乗っ取った子供は家族に会いに行った。


 その若い夫婦は、能力が能力が解けて狐の姿に戻った人撫を受け入れてくれたらしい。

 子供と会わせてくれてありがとう!!!と。


 人撫は若い夫婦と幸せに暮らしていた。

 しかし、その幸せは簡単に壊された。


 紅い耳飾りをつけた大柄な男によって。


 その男は怪異である人撫を容赦なく殺しに来たらしい。

 そして、その過程で人撫を受け入れてくれた若い夫婦も殺された。

 

 だが、若い夫婦が最後まで男に抵抗したおかげで人撫は逃げられたらしい。

 そして力尽きていたところを――――――


 『――――――ナルに助けられたんや!!!ってどないしたん!?頭なんか下げて』


 悪かった。

 興味本位で聞いていいことではなかった。


 辛いことを思い出させてしまって、済まない。


 『いやいや、頭上げてーな。ワシを助けてくれたんやから、そんなん気にせんで良いよ』


 ありがとう。

 そう言ってもらえると助かるよ。


 ところで人撫。


 『なんや?』


 その男がつけてた耳飾りって、俺の耳飾りと同じだった?


 『う〜ん、色はちゃうけど同じやな』


 そうか・・・人撫。少し用事が出来た。

 ここで待っていてくれ。


 『ん?ああ、気を付けてな』


 ああ。








 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆








 〜現在〜


 『で、その後どないしたんや?』


 人撫を襲ったやつが当時の会長だったからぶん殴った。


 『え!?じゃあワシが原因で前会長と大喧嘩したん?』


 そうなるね。


 『そうなんか〜ってちゃうちゃう。目的忘れるとこやった』


 ん?目的?


 『そう。ナルも気になるやろ?なんでワシとの出会いを語らされとるのか!!!』


 まぁ、そりゃあ。


 『ナル、お前今日どこ行くつもりやった?』


 ?【狂毒】の素材になる怪異を探しに行くつもりだったけど。それが何だ?


 『ナルにとってワシって相棒やんな?』


 そうだね。


 『ワシとの出会いを思い出してその想いを更に強くなったよな?』


 それは―――


 『あ?』


 ―――そうです!!!


 『じゃあ、分かるやろ。ワシが何を言いたいのかが』


 いや、分からない。


 『なんでやねん!!!!』


 もうはっきり言ってよ人撫。お前は何が言いたいの?


 『っ。わざわざ怪異なんか探しにいかんでも、ナルにはワシがおるやろ!!!ワシの毛を毒の素材に使えや!!!!!!!!!!!!!!!』


 ・・・ええぇ


 『朝からずっと待ってたんや。ナルがワシを頼るのを!!!!』


 いや、相棒の毛を毒の素材にするのは・・・


 『正論いらんねん。こんな時だけまともになるなや!!!』


 ってかなんでそんなに使って欲しいんだ?


 『そ、それは』


 それは?


 『相棒として、役に立ちたかったんや』


 もう充分立ってるけど。


 『ちゃうねん。今回の依頼、ワシは行かれへんやろ?だから、』


 だから俺の武器となって付いていきたかった?


 『そ、そうや・・・あかんか?』


 いや、凄く嬉しいよ。ありがとう人撫。


 『そ、そうか。良かった』


 安心してる?断られなくて。


 『うっさいわ!!!ていうか、ワシの毛使うんや。絶対、生きて帰ってこいよ』


 勿論。俺は前会長を殴りに行っても生きて帰った男だ。心配するな。


 『いや、めっちゃ心配やねんけど』

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