第2話 午後のティーブレイク。
「お呼びでございますか?アグネス部長。」
午後のお茶に呼んだのは、古参のメイド。ここの創業当初から働いてくれているアンネ。20歳の頃拾ったので、もう30をいくつか超えたか。新人が入ると実習に連れていくベテラン。
「ええ。あなた、ドーリス侯爵家に詰めていたわよね?」
紅茶を2人分入れて、座ったアンネの前に出す。いい香りだ。
「はい。今回は洗濯メイドで入っておりますので、情報の拡散は安易でございます。思ったより皆様、食いつきが良いところを見ると、ドーリス侯爵が娘をリーンハルト様にと考えていらっしゃるのは間違いないかと。」
この子は、火種。
明るくおしゃべり好きなこの子には本当に適職だわ。
「人の出入りも多いお屋敷ですので、商人から商工会辺りまでもう浸透いたしましたでしょう?」
難なくそう言って、紅茶を飲んでいる。仕草は今は上品だが、矯正するのにかなり時間が掛かった。生まれたばかりの赤ん坊を抱えて途方に暮れていた。食べていくためになんでもする、という言葉通り、メイドとしても一流になった。子供と寮に住んでいたが、息子はもう大きくなったから、職業専門校に入ったと言っていた。女の子ならうちで雇えたのにね。
「そうね。相変わらずいい仕事をするわね。今度はいよいよお嬢様を…カロリーヌお嬢さまがお似合いだと広めてみましょう。ね。誰が、どんな風に動くか見たいから。」
「かしこまりました。」
みんなにそう言ったことを命じているわけではない。適性もあるし、何より、口が堅いことが必要。
そうね…アリーナあたりはいい火種に育ちそう。
もう一人いる古参のメイド、アデリナは火消し。今は王城に入っている。
広げた噂を、噂を被せて消していく。もめごとも大概のことは蹴散らしてくる。
アーダは天性で火消し向きね。あの子は一人で無理しないで協力を仰いでくる。それも才能ね。うまく納めてくる。先方に恩も売れるのに、そんな気もないようだわ。元々の教養も礼儀作法も武器になるわね。
あと、そうね、アメリーは今一つ感情が読み切れない。良くしゃべる子だけど。
どの部署もそつなくこなせるし、なんなら料理は料理長並みの腕前。給仕も侍女も出来る。あの子は…。