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駆逐艦長ですが、異世界会津に召喚されました! ~令和JKとハーフエルフ王女とゆく、戦記×青春のほのぼの冒険譚~  作者: 房吉
第3章 王都(会津若松)編

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第61話 牢獄のソースカツ丼と真実の石

 俺たちは王宮の地下深くへと連れていかれた。


 ひんやりとした空気が肌を刺し、松明の灯りだけが頼りの薄暗い通路を進む。湿った石壁から滴る水音が、不気味に響いていた。


 やがて、重厚な鉄格子の前に立った。


「さあ、しばらくここでおとなしくしていなさい」


 衛兵の冷たい声と共に、俺たち四人は牢獄へと押し込まれた。扉が重々しく閉まり、鍵のかかる音が廊下に響く。


「ちょっとぉ~! 本物のお姫様を牢屋に入れるなんて、そんなのありえないでしょ!」


 陽菜が鉄格子を掴み、必死に訴えた。その様子に、俺は思わず苦笑してしまう。


「うるさい! 偽物が何を言っても無駄だ」


 衛兵は冷淡に言い放ち、松明を持って立ち去った。


 牢獄の中を見回すと、意外にも広々としていた。四つの簡素なベッドと小さなテーブル、水の入った桶が置かれている。壁には小さな窓があり、かすかに光が差し込んでいた。




「これが牢獄……?」


 陽菜が首を傾げる。


「映画より全然キレイじゃん」

「王族や貴族用の牢獄ですわ」


 スイリアが静かに説明した。その声には、どこか寂しさが滲んでいる。


「一般の罪人とは扱いが違うのです」


「なるほど、なんだかんだ言って『王女様』扱いしてるってことだにゃ」


 ミアが肩をすくめた。


 俺は壁に寄りかかり、腕を組んだ。頭の中で状況を整理する。


「しかし、三日前にスイリアが戻ったというのは気になるな。何か裏があるのかもしれない」


 スイリアは落ち着きを取り戻し、ベッドに腰掛けた。その横顔には、父親に会えなかった失望が浮かんでいる。


「私を騙る者がいるというのです。父上は騙されているのかもしれません……」


 陽菜がスイリアの肩に手を置いた。


「大丈夫、なんとかなるよ! 私たち四人なら、きっと真実を突き止められるって!」


 その頼もしい言葉とは裏腹に、陽菜の顔にも不安が浮かんでいるのが見て取れた。俺は彼女たちを守らなければという責任感に、胸が締め付けられる。


「そ、そうですわね。ありがとう、陽菜さん」


 夜が更けていく中、俺たちは交代で見張りをしながら、脱出と真相究明の策を練った。しかし、これといった名案は浮かばない。




 翌朝、牢獄の扉が開く音で目を覚ました。


「朝食です」


 侍女が四つの食事トレイを持ってきた。俺は寝ぼけ眼でトレイを見下ろし、思わず二度見した。


「これ、牢獄の食事?」


 陽菜が目を丸くする。


「刑事ドラマで見るやつだ!」


 そこには、なんと四人前の会津名物「ソースカツ丼」が乗っていた。


 まさかのカツ丼である。しかも、ただのカツ丼じゃない。会津名物のソースカツ丼を出してくるとは。


「なかなか自白しない容疑者に、カツ丼を食わせて自白を促すって話は聞いたことがあるけど……。」


陽菜は何とも言えないひきつった顔でつづけた。


会津のB級グルメが食べられるのは嬉しいけど、牢獄で食べるのはちょっと複雑……」


 陽菜が苦笑いを浮かべた。



「これって、美味しいものを食わせて、自白に導こうという魂胆かにゃ……?」


 ミアも訝しげに丼を見つめる。


「朝からカツ丼とは……」


 俺は箸を手に取りながらため息をついた。


「この王国の牢獄の運営は大丈夫かしら……」


 スイリアも呆れたような声を出す。


 とはいえ、腹が減っては戦はできない。俺たちは複雑な気持ちを抱えながらも、ソースカツ丼を平らげた。


 食事を終えると、再び扉が開いた。今度は年配の男性が現れる。黒い法衣を身につけ、首から重たそうな銀のペンダントをぶら下げていた。


「偽スイリア様、カツ丼を食べて、罪を自白する用意はできましたかな?」


 老人の言葉に、俺は思わず噴き出しそうになった。本当にそのつもりだったのか。


 スイリアは毅然と立ち上がった。


「私は偽物ではありません。父上にお会いさせてください」

「それは王の決断次第です」


 老人は厳かに自己紹介をした。


「私はラウディス、王室魔術師にして真偽判別官です」


 そう言うと、懐から小さな水晶を取り出した。


「この真実の石が、あなた方の嘘を暴きます」


 俺は一歩前に出た。これはチャンスだ。


「ぜひお願いしたい。この石で真実が明らかになるなら、我々は無実を証明できるはずだ」


 ラウディスは水晶を掲げ、呪文を唱え始めた。水晶が青白い光を放ち、牢獄を照らす。


「まずは問いかけます。あなたはスイリア・ホルシーナですか?」


「はい、私はスイリア・ホルシーナです」



 水晶の光が緑色に変わった。ラウディスは眉をひそめる。


「緑は……真実を意味します」

「ほらー! 言ったとおりじゃん!」


 陽菜が勝ち誇ったように声を上げる。俺も内心でガッツポーズを決めた。


 しかし、ラウディスは首を振った。


「まだ続けます。あなたの母上の名前は?」

「エリアナです」


 再び水晶が緑に輝く。


「父上の寝室にある宝物は?」


「水晶の鷹の置物です。それと……」


 スイリアは少し顔を赤らめた。


「ここでは話せないような書物が隠し引き出しにあります」


 スイリアがなぜ顔を赤らめたのだろうか。


 もしかして、いかがわしい書物だろうか。王も男だからな、うん。



 その言葉に、ラウディスの表情が変わった。水晶を見つめ、それから困惑した顔でスイリアを見る。


「これは……予想外です。あなたは本当の記憶を持っている」


「当然ですわ!」


 スイリアは胸を張った。俺も安堵の息を漏らす。


「では、父上に会わせてください」


 しかし、老人の次の言葉に、俺たちは再び愕然とした。


「しかし、三日前に戻られた方も、同様に真実の石に偽りなしと出たのです……」


「それは何かの間違いです! 私こそが本物です!」


 スイリアの必死の訴えが響く中、突然、轟音が鳴り響いた。


 ドォォォン!


 牢獄の壁が激しく揺れ、土埃が舞い上がる。石が崩れ落ち、俺は反射的に陽菜とスイリアを庇った。


「なっ……何が起きたの!?」


 陽菜が叫ぶ。



 土埃が晴れると、壁に大きな穴が開いていた。そこから現れたのは——


「エドワード将軍!?」


 俺は目を疑った。先日ユガミ温泉で出会った、あの軍人が数人の兵を引き連れて現れたのだ。


「やはり君たちがここにいたか」


 エドワードは颯爽と穴から入ってきた。


「噂を聞いて急いで参じた」


「エドワード将軍、私たちは偽物だと言われて投獄されたのです」


 スイリアが訴える。


「それは聞いている」


 エドワードは頷いた。その表情は真剣そのものだ。


「だが私は、こちらのスイリア姫が本物だと確信している。私はこの者たちを深く信頼しているからだ」


 ラウディスは混乱した様子で口を開いた。


「将軍、これは内政問題です。軍が介入すべきではない……」

「ラウディス殿」


 エドワードは厳しい声で遮った。


「これは単なる内政問題ではない。王国の安全保障に関わるのだ。よって、私にも関与する権限がある」


 エドワードは俺たちに向き直った。


「城内に偽のスイリア姫がいる。それはヴァルター伯爵の計略だ」


「ヴァルター?」


 スイリアが驚いて尋ねる。


「彼は父上の側近でしょう?」


「そうだ。だが最近、彼はサウスアイヴェリアとの戦争を煽っている。王を操るため、偽姫を使っているのだ」



 俺は頭の中で素早く状況を整理した。


「つまり、エルフ側に偽のスイリアを送り込んで挑発し、戦争を引き起こそうとしているってことか」


「鋭いな、芦名殿」


 エドワードが感心したように頷く。


「でも、どうやって父上に会えばいいのですか?」


 スイリアが焦りを見せる。その瞳には、父親に会いたいという切実な思いが宿っていた。


「私に任せろ」


 エドワードは兵士たちに指示を出した。


「彼らを王の私室に案内しろ。誰にも見つからぬよう」


 兵士たちは敬礼し、俺たちを城の秘密の通路へと導いた。


 薄暗い通路を進みながら、俺は陽菜に小声で尋ねた。


「大丈夫か?」

「うん、なんか映画みたいでドキドキする!」

 彼女の前向きさに、俺も少し気が楽になった。



 城内を抜け、次第に豪華な装飾が増えていく廊下を通り、やがて一行は重厚な扉の前に立った。


「陛下は中におられる」


 兵士が小声で言う。


「しかし……」

「なんだ?」


 エドワードが尋ねた。


「偽スイリア様も一緒です」


 一同は顔を見合わせた。いよいよ真実が明らかになる時が来た。


 スイリアは深呼吸し、俺たちを見回した。


「構いません。真実を明らかにしましょう」


 俺は彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫だ。俺たちがついている」


 スイリアは微笑み、頷いた。


 エドワードが扉をノックすると、中から疲れた声で「入れ」という返事があった。


 いよいよ、運命の対面だ。

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