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駆逐艦長ですが、異世界会津に召喚されました! ~令和JKとハーフエルフ王女とゆく、戦記×青春のほのぼの冒険譚~  作者: 房吉
第2章 タジマティア(南会津)編

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第31話 過去の亡霊を超えて~芦名、再起の決意~

 「すまない……。俺は、お前たちを……守りたかった……!」


 歯を食いしばるが、亡霊たちは非難の眼差しを緩めない。


血まみれの軍服に身を包んだ彼らの目には、深い怨恨と失望が宿っている。


その視線の一つ一つが、芯まで突き刺さるように痛い。


 そのとき、妙に落ち着いた声が頭の中に響いた。それは誰のものとも分からない、どこか懐かしくも新しい声だった。


 (――君は、仲間を救うためにここに来たのではないのか? 今、再びその後悔に囚われている場合なのか?)


 ハッとする。たしかに、俺は仲間を守るため、もう一度立ち上がった。陽菜を助けるためにも、こんな幻想に足を止めているわけにはいかない。


彼女の笑顔が、ふと脳裏をよぎる。


 白い息が冷たい霧に溶け込む中、俺は震える膝を抑えながら立ち上がった。鉛のように重い体を無理やり起こし、周囲の亡霊たちに向き合う。


 「——でも、俺は、二度と繰り返さねえって決めたんだ!」


 自分で自分に言い聞かせるように声を張り上げる。わずかに気力が戻り、亡霊たちの姿を睨み返す。たとえ彼らが俺の罪悪感の具現化だとしても、今度は逃げはしない。


 「あのときは守れなかった。エンドウ沖やバタビア、サボ島、そしてビスマルク海…… 全部、俺の責任だと言われるなら、それも背負ってやる」


 足が震えるのをなんとかこらえ、刀の柄を握る。指先が冷え切っているが、それでも刀の感触が俺に力を与えてくれる。ここでは斬る相手などいないのに、意味など分からないまま、ただ今の自分にはこれしかできない。


 「だけど、あんたたちを見殺しにしたままじゃいられねえ。今度は必ず……誰一人失わずに救ってみせるんだ! 陽菜やスイリアを、この世界にいる仲間を救って、俺は俺の責務を全うしてやる!」


 声を絞り出すたび、喉が痛い。でも、言わなければならない。この思いを、自分自身にも、亡霊たちにも、届けなければならない。


 「俺は……ここで止まるわけにはいかない。あの時を繰り返すなんて……絶対にごめんだ……!」


 亡霊たちの顔をまっすぐ見つめる。身体が震えそうだが、俺はなんとか声を絞り出した。


背中に冷たい汗が流れ、指先はまだ震えている。




それでも、もう逃げるわけにはいかない。




 「……お前たちが俺を責めるのは当然だ。でも、俺はもう逃げない。俺は俺の責務を果たすために、この異世界に来たんだ……! ビスマルク海で救えなかった分まで、今度こそ守ってみせる」


 言い切ると、甲板を覆っていた火炎がゆっくりと消え始めた。まるで波に飲まれるように、炎は徐々に霧の中へと溶けていく。


亡霊たちも薄く霞み、潮風のような匂いだけを残して、静かに消えていく。


 彼らの表情は、最後の瞬間、少しだけ和らいだようにも見えた。あるいは、それは俺の希望的観測にすぎないのかもしれない。


 気づけば足元は森の湿った土。視界には白い靄が漂うが、さっきの地獄絵図は消え失せていた。まるで長い悪夢から抜け出したようだ。霧の向こうに、薄く木々の影が見える。


 「はぁ、はぁ……」


 肩で息をしている自分に気づき、思わず膝をつく。心拍数が尋常じゃないほど上がっていて、汗が首筋を伝う。


けれど、さっきの亡霊たちの声はもう聞こえない。


その代わり、風が木々を揺らす音や、遠くの小川のせせらぎが聞こえ始めていた。


 エンドウ沖やバタビア、サボ島の亡霊まで引き連れて襲いかかるなんて、さすがに堪えた。


あの時の記憶は、今も鮮明に残っている。


けれど、その分、胸の奥底にあった重い澱(おり)が少しだけ消えた気がする。


 「……あれは……夢、じゃない。幻……"幻影の試練"ってやつか」


 そう呟いたとき、遠くでスイリアの声が聞こえた。かすかだが、間違いなく彼女の声だ。


そういえば、周囲にスイリアの姿が見当たらない。


彼女も同じように、過去の苦しみを幻で見せられているに違いない。——ハーフエルフの王女として差別や孤独を抱えていた彼女が、あの忌まわしい記憶をえぐられたらどうなるだろう?


 銀紫色の髪を持つ彼女の横顔が、不意に脳裏に浮かぶ。冷静で強い彼女だが、あの幻影に耐えられるだろうか。俺はそう考えるだけで胸が締め付けられた。


 「スイリア、どこだ!」


 叫んでも反響が返ってくるばかり。山々に囲まれた谷間では、声が木霊してあちこちに飛び交う。しかし微かに、


 「ちくしょう……早く合流しねえと」


 そうつぶやいて、俺は半ば手探りで霧の中を進む。もしスイリアがこっちに向かってるなら、いずれ交差するはずだ。心臓がまだ早鐘を打つのを感じながら、一歩一歩足を踏み出した。


 「もう誰も……失わせねぇ、お前たちの死は必ず無駄にはしない……。スイリア……待ってろよ!」


 そう誓うようにして、俺は深い霧の奥へと消えていった。


どこかでかすかに聞こえる水の音。それが天狗の冷泉なのか、あるいは別の流れなのか。


 どうにか息を整え、あたりを見回す。まだ霧は薄く漂っているが、さっきほどの絶望感は薄れていた。俺は再び握りしめた拳を確認し、ゆっくり立ち上がった。


 今度はどんな幻が待っているのか。それとも、ついに目的の泉に辿り着けるのか。


 いずれにせよ、陽菜を救うため、そしてスイリアを見つけるため、俺は前に進むしかない。

第31話をお読みいただき、ありがとうございます!


今回は、芦名が幻影の試練の中で自分の過去と向き合い、新たな決意を固める場面を描きました。


過去の罪悪感を背負いながらも、それを乗り越えて前に進もうとする彼の姿。そして、スイリアを心配する気持ちに、彼の成長が垣間見えます。


次回、芦名はついにスイリアと再会できるのでしょうか? そして、念願の天狗の冷泉の水を手に入れることはできるのか? 陽菜を救うための旅は、まだ続きます。


次回もぜひお楽しみに!



皆さんの応援が私の創作の原動力となっています。


少しでも楽しんでいただけたなら、ブックマークや感想、評価ポイントなどをいただけると大変嬉しいです。


「良かった」「このキャラクターの言動が印象的だった」など、ほんの一言でも構いません。


読者の皆さんの声を聞くことで、より良い物語を紡いでいけると思っています。

よろしくお願いいたします。

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女子SIDE(女性向けリライト版)を読みたい方はこちら
https://ncode.syosetu.com/n3449kj 陽菜外伝「陽菜の歴史好きJKの日常 ~歴史に恋する私の放課後~」
https://ncode.syosetu.com/n0531kk/ スイリア外伝「白き手袋の癒し手 〜エルフの医師と小さな村の物語〜」
https://ncode.syosetu.com/n9642kj/
― 新着の感想 ―
どうも、星色です。こんなところで言うのもあれですが、レビューありがとうございます。 一通り読みましたが、文章自体破綻しているわけでないようですね。 ここからはあくまで私自身の個人的な意見ですので、不…
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