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吐く息が震えた  作者: シンジ
7/7

2-3

次の日のバイト中、私はパンを並べながらずっとあの歌を頭の中で歌っていた。

そして次歌う場所を考えていた。次に急行が止まる駅なら「大黒通り」になる。

でもあそこは繁華街だから、他の路上ミュージシャンも多いし、なんせ緊張する。

すると愛里が横からやってくる。

そして、私がやっていたパンの陳列を手伝う素振りをして、小さく呟く。

「あんた、昨日なんかあった?いつもと様子違くない?」

「え?」

急の言葉に驚く私。愛里は小さく笑う。

「つむぎって本当、ピュアよね。分かりやす過ぎ」

「い、いや。あのほら長峰駅歌えなくなったじゃん?だから次はどこにしようかって考えてたのよ」

愛里は私の顔をジッと見る。

「それだけ?」

「うん。わ、私にとっては結構重要な事だから」

「そう」

そして愛里はパンの陳列を続ける。そしてボソッと呟く。

「大黒通り以外に、選択肢ある?」

「あ、でもあそこは人通り凄いし、他のミュージシャンも多いし」

彼女は私の言葉を遮り

「だからいいんじゃん。私あんたの歌好きだよ、聞く人が増えればきっともっと有名になるって。私ずっとそう思ってたもん」

それは、意外な言葉だった。私は少し笑って

「よく言うよ。私の歌なんて数えるくらいしか聞いた事ないくせに」

愛里も笑う。

「あんたの歌、最近暗いからね。しかもコピーばっかだし。でも最初の頃の歌は本当に好きだった、あんたが思ってる以上に聞きたい人多いと思う」

陳列が終わったパンを少し整えて愛里は立ち上がり

「だから大黒通り、丁度いいんじゃない?初心に返って行ってきなよ」

すると丁度、空になったレジに人が立っているのを見つけ、彼女はレジに走っていく。


・・・初心。


なんだかこの言葉は妙に私の心を突き刺した。初心、か。

するとまた歌詞が降ってくる。


「マジシャンが持つのは偽りの剣 でも何も知らず目を瞑る私 見える物は全て鮮やかで 

流れでる血さえも鮮明で興奮した 嘘か本当かなんてどうでもよかった 

それでも今の私はここにいる」


ゾクッ、そんな音が脳内から聞こえる。私は忘れない内にメモを取り出し歌詞を書き出す。

そして考える。

確かに、初心に戻って大黒通りはありかも知れない。それに、昨日出来た曲も歌ってみたい。


・・・歌ってみたい。こんな感覚、いつ振りに感じたんだろうか?


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