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吐く息が震えた  作者: シンジ
5/7

2-1 浮気

ゆっくりとドアノブを捻る。どうやら鍵は開いている。私は音がしない様、ゆっくりと玄ドアを数センチ開け、土間を見る。そこには彼の靴と女性物のサンダル。

すると、2人の会話が臨場感を増して聞こえてくる。

「じゃあ途中まで、22時10分にアラームかけるから」

「もう、何か今日性欲強くない?」


私は、時間を逆再生する様にゆっくりと玄関を閉めた。



・・・一体、今何が起っているんだろうか?


心がまだ、私のこのゆっくりな動きにすら着いてきていない。私は動揺し、部屋の号室を確認する。

自分でもやっている行動が理解出来ない。間違ってる筈ないし、彼氏の声も聞こえているのだ。

でも、ただ私は、今のこの時間を埋めたかった。

少しでも、この思考を止めたかった。

部屋は209号室。9の所に蜘蛛の糸が少しかかっている。私はそれをゆっくりと取る。

これはいつからあったんだろうか?それには気付かなかった。

また中から声が聞こえる。それは会話なのか、それとも喘ぎ声か?もう私の耳が聞くのを拒絶しているのだろうか?よく分からない。


ただふと思う。雑音の中で歌う私の声も、通行人からしたらこんなどうでもいい声に聞こえているのかもしれない。



マンションのすぐ近くには公園がある。そこのベンチに座って私は、夜空に同化している木の葉っぱを見上げていた。

ふと携帯を見る。時刻は9時55分。

・・・って事は後15分で彼のアラームが鳴る。私が帰るまでは後35分。

肉は腐ってしまわないだろうか?こんな状況の中でそんな事が頭を過る。

きっと私は、時間を埋めたくて仕方ないのだ。本当は玄関を開けて彼に言い寄りたかった。

驚く浮気相手を横目に罵声を浴びせたかった。でも今私は2人の情事が終わるのを只々待っている。

詰め寄る勇気も、今回の事で彼との関係を終わらせる勇気もない。


すると、急に頭の中に歌詞が浮かんだ。


「幼い時の私の記憶 それは歓声に包まれた歌手と歌声 脳を焼かれる程の衝撃と憧れ

それだけを希望に やってきた筈なのに 聞こえてくるのは 雑音みたいなノイズだけ」



・・・悪くない。テンポはどんな感じになるだろう?

私はギターを取り出し、音色と共にもう一度歌う。するとまた、新しい歌詞が浮かんでくる。

それは上京する前、本気で夢を追っていたあの頃の私の様だった。


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