1-4
「そんな事ないでしょ。無謀な夢追ってるのは同じじゃない」
笑う愛里。
「無謀とか言わないで。一応向こうのLINEゲットまではいったんだから」
そう言って彼女はロッカーを開ける。中には無数に張られたアイドルの写真。
「凄いじゃん。なら私よりよっぽど進んでるよ」
「はは。でも会うのは難しいよ、お金がないとね」
愛里はそう言って制服を脱ぐ。そしてクシャクシャに丸めてロッカーに投げ入れる。
「てか、今日も長峰駅でやるの?」
「え?そうだけど」
「あそこって今日から大規模な工事じゃなかったっけ?」
私は事務所を出ようとドアに伸ばした手が止まる。確かに駅の周辺に何個か看板が立てかけてた様な。そく考えたら、規制のチラシも貰ってた様な。
実際長峰駅に行くと、愛里の言う通り駅には大掛かりな策がされ、作業員たちがあちこちでうるさい重機と共に作業をしていた。
これだと、どのみち通りを離れてもこの音で歌は聞こえない。
・・・今日はもう帰ろう。
すると急にアイディアが降ってくる。でもそれは歌詞じゃない。
「たまには、私が手料理でも振舞うか」
基本は私か彼が、お互いのバイト先での廃品弁当を持ち帰る事が多かった。2人ともそれで満足してたし、偶然にもお互い食への興味が薄かった。
でも、だからこそたまには、少しいい物を食べながら夢を語り合うのもいいのかも。
考えれば考えるだけ妄想は膨張していき、私はその原動力のまま近くのスーパーに向かった。
帰り道、缶のハイボールを一本だけ飲み、半額シールの貼られていないお肉と野菜、安いワインが入ったビニール袋を持って夜道を歩く。
家の前に着き、明かりの付いている窓を見る。いつもの事ながら、またにやけてしまう。
そして今日は、いつもは持ち込む事のない食材と共に部屋へ向かった。
そして玄関までたどり着き、ドアを開ける直前で異変に気付く。
「もう今からは駄目だって、彼女さん帰ってきちゃう」
「まだ大丈夫だよ。22時半って言ってたから」
・・・女性の声?




