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人造人間

作者: 酒飲歌華

これから読む文章はとある手記からの引用である。


抜粋


『生まれた頃は普通の人間でした。

いつ頃からか私は普通とはかけ離れていたのかも知れません。


…日

 19XX年、私はこの地に生まれ落ちました。他の人ととかく変わらぬ、特別優雅でもなく、しかして何不自由なく生活してきました。人並みの愛情を注がれて私はすくすくと育ちました。


…日

 いつからでしょうか、私は育ってゆく中で何かが欠けてしまいました。穴の空いたブロックは育つ毎に不安定さが増していきました。崩れ落ちそうになりながらもガタガタになりながらも慎重に、繊細にブロックは積み上げられていきました。


…日

 私はいつしか愛を感じられなくなりました。人を信ずることも出来ず、次第に人と仲良くするのも苦手になりました。私は孤独になりました。


…日

 私は無限に続くこの地獄を終わらせようとはひとつたりとも思いませんでした。むしろ、その地獄が好転するのも悪化するのも恐れてしまいました。そして私は自ら好んで孤独を続けました。しかして現状維持は難しく維持しようとすればするほど私を蝕む空洞はどんどん広がり、そして悪化していきました。


…日

 私はこの地獄に苦しみながら、しかして楽しみ始めました。私は本当に普通とは違う人間になってしまいました。そしてそれすら喜ぶようになりました。私は周りの人とは違う。特別な人間である。そんな気持ちが歪な私の心をさらに歪にさせていきました。


…日

 遂に私は自分で作った理想の悲劇の人になれました。それはとても苦しく、無様で、崇高で、ある種の芸術美を帯びていました。


…日

 私はこの日々にウンザリしていました。自己嫌悪と自己愛の狭間で苦しみながら楽しむその行為は私にとって地獄でしか無かったのです。心のどこかで助けて欲しいと思いつつも私は助かることを拒否するのです。これほどの乖離を抱えつつも私はそれを信じれぬ人には打ち明けられず、偽りの自分を演じているのです。私は三体の人造人間で構成されていました。


…日

 私はこの玩具箱を捨ててしまうことに決めました。この茶番を終わらせる時が来たのです。不思議と悲しい気持ちにはなりませんでした。また 様と出会えるこ が出来たなら、今度は幸せな生活が出 ることを祈っており す。…』


その先は涙で滲み、読むことが出来なかった。

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