密室大量殺人事件
突然、ビー! ビー! ビー! と総理官邸の中に警報音が鳴り響くと共に。
「ア○リカ本土にロ□アか注国から発射されたと思われる核弾頭ミサイルが着弾しました。
ア○リカ本土や世界中の海に配備されていた潜水艦から、ロ□アや注国などの敵対していた国々に向けて報復の核ミサイルが発射されています」
スピーカーから国防軍兵士の声が流れる。
総理大臣である私は、家族や上級市民である部下たちと共に税金を湯水の様に遣い建造した、官邸の地下深くにある核シェルターに逃げ込んだ。
逃げる途中、幾度も、官邸が大きく揺れる。
スピーカーから、「ア○リカ大使館と首都圏にある駐留軍の基地及び国防軍の基地や駐屯地に、ロ□アや注国が発射したと思われる核ミサイルが次々と着弾しています」との報告が流れた。
核シェルターの分厚い扉が閉じられる。
部下たちがシェルター内の点検に向かう。
食糧備蓄倉庫を見に行った部下か血相を変えて駆け戻って来て叫ぶ。
「食糧が、備蓄されている筈の食糧がありません」
「何だと?
食糧が無ければこの核シェルターと言う密室で餓死してしまうではないか。
放射能は危険だが、別なシェルターに向うぞ」
「無理です。
核シェルターの扉は、致死量の放射能を検知している間は開きません」
「そんな………………」
「ハハハハハ!」
立ちすくむ私たちの耳にスピーカーの笑い声が響いた。
「私たち一般市民が納めた税金を自分たちが自由に使える金だと思い込み、自分たち用に造った核シェルターに逃げ込んだ上級市民の皆さん、そこはあなた達の棺桶になるんですよ」
「どういう事だ?」
「計画したのはあなた達上級市民だが、実際に建造したり食糧や燃料を運び込んだりしたのは私たち一般市民。
そこがどういう物か気がついた私たちはサボタージュしたんですよ、食糧や燃料の運び込みを中止し、運び込んだ物資を運び出すというサボタージュをね。
その核シェルターと言う密室で、餓死するのも弱肉強食で食い合うのも自由。
頑張ってください。
ハハハハハ」
笑い声が途切れると共に、核シェルター内の電気が消え非常灯が点く。
発電機の燃料が無くなったのだろう。
私たち核シェルターに逃げ込んだ上級市民は、薄暗い密室の中で一般市民の最後のしっぺ返しに凍りついたように立ちつくしていた。