5/バーと店主
シュピィが扉を開けると、そこには......
もう一つ扉があった。
「なにそんな間の抜けた顔してんだ?」
「あ、いやなんでもない。」
するとシュピィはあ、と何かに気付いたような表情をする。
「さてはニーちゃん、なんか期待してて、それでまた扉だったから拍子抜けだったんだな。」
うぐっ。
図星をつかれて動揺してしまう。
「まーまーいいじゃねーか。それに、こっちはちゃんとすごいからな!」
そう言って二つ目の扉をシュピィが開ける。
するとそこには、先ほどの服屋からは想像できないようなものが待っていた。
カウンターに並ぶ多くのグラス。黒と赤の装飾に彩られたカーペット、そしてカウンターとそこに立つ1人の女性。
その女性はこっちに気付くと、シュピィに飛びついていく。
「シュピちゃんおかえりー!いやー来てくれて嬉しいよー。」
「うわ、抱きつくな!マルシャ!」
「まーまーいーじゃん!」
マルシャと呼ばれた女性は、先ほどの服屋にいた店主の面影がある金髪を二つ結びにしていた。
マルシャはシュピィに抱きついたまま俺の方を一度見る。
「シュピちゃんこの人はー?もしかして新入りくんー?」
「そういうことだ!私と同じで盗賊スキルを持ってる。でも、人間だ。面白いだろ?」
そうシュピィに言われて、女性はシュピィから離れ、こっちに近づいてくる。
「シュピちゃんが見つけて盗賊スキル持ってるのに人間なのー?ちょっと悪いんだけど、冒険者ギルド認定書貸してくれるー?あ、もちろん嫌ならいいんだよー。訳ありだったりするしねー。」
「あ、ああ大丈夫です」
俺は冒険者ギルド認定書を渡す。そうすると女性は、少し考えたような素振りを見せたあと、ぶつぶつと小さい声で呟き始める。
「なるほどなるほどー。確かに盗賊スキルを持ってて人間、それでいてパーティーでこの階級で、この書にかかっている魔法の供給が途切れているけどかかってた跡はある。つまりパーティーを追い出されたとかその辺かー。確かにそれならシュピちゃんが連れてくるのも分かるなー。」
なるほど、今見抜かれたようなことを冒険者ギルド認定書をシュピィに見せた時に全部見抜かれたのか。これからは簡単に見せないようにしよう。そう考えていると、女性が顔をこっちに向ける。
「よしキミ、大体わかったぞー。キミは晴れて闇社会ってやつの仲間ってことだ。そうと分かれば、このカウンターに座って座って。あと、二重扉で気付いてるだろうけど、ここはしっかりと防音だから、安心して話していいよー。」
女性に促され、カウンター席にシュピィと一緒に座る。
「さてさて、シュピちゃんはいつものでいいとして、キミは何食べるー?せっかくバーなんだから、なんか食べていってくれー。」
「あ、マルシャ、言ってなかっけど今日は飯を食いに来たんだ。だから元々そのつもりだ。後、ニーちゃんも私と同じやつでいいだろ?」
「じゃあ、それで。」
「はーい。」
バーの店主のマルシャは、料理を作りはじめる。
そしてシュピィがこっちに向き、真面目な顔を作る。
「じゃあニーちゃん、言ってた通り、色んなこと聞かせてもらうぞ。」
「ああ、もちろん。そっちのことも聞かせてもらうけどね。」
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