25/聖剣使い
「あの、今日は本当にありがとう.......ございました」
あれから数十分後、俺たちは屋敷の外に出ることができた。
そして、今はフェールと別れようとしているところだ。
「いや、いいんだ。それより、本当に通報とかを任せていいのか?こっちとしてはありがたいんだけど、大変じゃないか?」
俺たちはリッシュをあの隠し扉の中に閉じ込めることに成功したが、このまま放置していればあの地下室でリッシュは死んでしまう。
確かにリッシュは奴隷商という悪事を働いた。しかし、その罪に対する罰は、俺たちには決めることができない。
その理由は簡単だ。俺たちはリッシュという男がどれくらい奴隷商をやってるかの情報を持っていないからだ。
罪に対する罰は、その罪の重さで決まらなければいけない。
だからこそ、今回はそのスペシャリストに頼むことにした。
まあ、それが俺ら義賊の天敵でもある警備兵なんだが。
「大丈夫、です。その.......義賊っていうのは......あんまり警備兵に身元がバレないようにしないといけないと思うので.......私が行けば、多分リスクは減る....はず」
「......ありがとう」
「本当にありがとな!フェール!」
こうして俺たちはフェールに最後の仕事を頼んだ。
そして別れ際に、フェールにこう言われた。
「いつか、時間がある時に、フェアリーの森に来てください。その.......今日のお礼をしたくて......」
俺たちはそれに頷きで返し、マルシャさんのバーへと向かった。
「奴隷商をやっていた。という情報が、ボクの所に来たのですが」
屋敷にカイト達が潜入した次の日、屋敷の隠し扉が開き、青い聖剣を背中に背負った警備兵がリッシュに話しかける。
「.....ジャスターさん、ですか。デューケ家に見つかったとあったら、私もおしまいですね」
その男の名前は、ジャスター・デューケ。
聖剣、デューケの持ち主にして、警備兵最強の称号を持った、貴族にして騎士。
「......ボクは残念に思っています。リッシュさんもボクと同じ、新しい聖剣使いになると思っていたので」
「赤い聖剣、バロン.....ですか」
「バロン家が解体された時、国王がリッシュさんに聖剣を渡したのは、良い判断だとボクも思っていたのですけどね」
「悪人から悪人へ渡った。という所ですか」
リッシュは苦笑を浮かべながら言った。
ジャスターはリッシュの方に手を伸ばし、言う。
「あの聖剣は回収させていただきます」
それに対してリッシュはただ首を振るだけだった。
「無いですよ。聖剣」
「え?」
「黒と白のフードの盗賊に取られました」
その言葉を聞きジャスターは驚愕の表情を浮かべる。
リッシュはここで嘘をついても意味がないことを知っている。そしてそのことをジャスターも理解している。
「......はぁ、ボクは良い人たちに助けられたと聞いてたんですがね」
「それは完全に嘘ですね」
そう言ってリッシュが立ち上がり両手をあげる。
「話は終わりでいいですかね。さあ、牢屋に私を送ってください」
その言葉を聞き、ジャスターは能力を使う。
「“拘束”」
その瞬間、リッシュの体が動かなくなる
そして、
「“転移“」
ジャスターが発動した二つ目の能力で、リッシュの姿は完全にその場から消えた。
「.......悪人から悪人へ、そしてまた悪人へですか。」
「......あの聖剣は呪われているのでしょうか」
そう言って、ジャスターはその屋敷から立ち去った。
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投稿遅れてすいませんm(_ _)mこれからはまた元の投稿頻度で投稿します!




