23/これで
俺は隠密を解除しないまま、シュピィにだけ声が届くように小さい声で作戦を話す。
これは隠密を使っている者同士が見え、会話できることと、獣猫族と盗賊スキルで五感が鋭くなっているシュピィの耳を利用して、リッシュに聞こえないまま作戦を伝えているのだ。
俺が作戦を伝えると、シュピィが「なるほどな」という顔をする。どうやらこの作戦に乗ってくれるみたいだ。
そして俺はフェールにひとつだけ伝えておく。
「この後一瞬だけ手を離すから、絶対その場から動かないでくれ」
俺がそう言うとフェールが頷いてくれる。
「う、うん!」
「良し」
これで準備は整った。
ー作戦、開始だ。
「なあなあリッシュさん?位置がわかるんじゃなかったのか?さっきから一回も剣が当たってないぞ」
シュピィはリッシュが振るう剣が当たらないように振り下ろされるギリギリで後ろに下がりながら言う。
シュピィは相手の攻撃が当たっていないことを煽っているが、それはシュピィがその力をフルに使って当たる寸前で避けているから当たらないだけだ。
正直、何回かシュピィに剣が当たりかけていた。
しかし相手からは煙幕でそれが分からないため、シュピィはリッシュに攻撃が全然外れていると思わせるように喋りで誘導している。
本当にすごいメンタルだ。
「アナタみたいなタイプ、すごく嫌いですっ!!」
リッシュはシュピィの挑発に乗せられ、シュピィを追うことに全力を尽くし、剣を振っている。
「私も極端な完璧主義は嫌いなんだ。嫌い同士、両思いだな!」
その言葉と同時に、シュピィが大きく後ろに下がった、それも、開いた状態の隠し扉の前に。
「......本当にアナタという人はっ!!!」
それを怒りのままリッシュが追う。そしてリッシュのシュピィを狙った剣を、またシュピィはギリギリでかわす。
その怒りがこもった剣は勢いのまま空気を斬り、振りきった瞬間に隙が生まれる。
「フェール、手、離すぞ」
「は、はい!」
そしてそこで広いリビングの反対側から俺が動きだす。
「”瞬発“」
隙を逃さないよう一瞬で近づき、そして、もう一つ能力を発動させる。
「“転送”!」
その言葉とともに、右手にとてつもない重さを感じる。
転送は半径2m以内なら物を別の半径2m以内の場所に移せる能力。
今俺の右手に転送したのは、先ほどまでリッシュが手にしていた聖剣。
「なっ!」
急に持っていた物を失い、よろめくリッシュ。
「ハアアアアァァッ!」
それを、今手にした聖剣のつかの部分で、最大の力を込めてぶん殴った。
「ぐあっ!」
ーそしてリッシュを奥にあった隠し扉のさらに奥、地下へ続く階段まで弾き飛ばした。
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